コラム

新型コロナウイルス問題が明るみにした無駄な規制リスト

2020年04月09日(木)17時00分

たとえば、生活に身近な例を挙げると、スーパーでのレジ袋が復活したことが挙げられる。

昨今の社会的風潮ではプラスチック製のレジ袋を禁止する規制が米国では拡大しつつあった。しかし、今やレジ袋の代わりに使用されているトートバックは微生物が繁殖する感染症上の懸念が高まったことで逆に忌避され始めている。

そのため、一旦は社会から消えるかと思われたレジ袋が見直されている状況が生まれており、口やかましく環境問題を警告してきた人々の影響力が低下し、感染症による健康被害の発生懸念という現実の脅威が規制を停止させる結果をもたらし始めている。

日本でも7月1日からレジ袋が有料化されることが決まっているが、今後人々が感染症対策の観点から同方針の見直しを求める声が改めて出てくることになるかもしれない。

もう少し専門的な内容も見ていこう。米国政府は新型コロナウイルスがもたらした医療危機に対応するために多くの規制を緩和する決断を行った。

具体的には、CDCが事実上独占してきた検査等に関する民間開放による正確さ・速度の改善、医療用機器・製薬の承認に関する規制緩和、蒸留酒製造所での手の消毒液製造に伴う規制緩和、州境を越えて医療従事者を活用するための柔軟な規制運用、SkypeやFaceTimeを利用した遠隔診療の認可など、様々な規制が緩和されたことで、米国の医療サービスの供給体制は次々と見直されることになった。

無意味な規制を廃止していく好機としてこの期を活用すべき

もちろん個々の規制にはそれらを正当化する大義名分が掲げられてはいるものの、本物の危機に直面し、これらの規制は国民を保護する大義名分のものに緩和された。一定の期間経過後に政府によって規制を元通りにされてしまうこともあり得るが、人々は一度無意味だと悟った規制が復活することを本当に望むだろうか。

以上のように、新型コロナウイルス危機は、緊急事態宣言や都市閉鎖などの私権制限を拡大すると同時に、必要性が薄い規制の緩和などの自由を拡大する機会にも繋がっている。日本においても無意味な規制を廃止していく好機として、新型コロナウイルス問題を活用していくことを考えるべきだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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