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トランプ政権、ソマリアのISIS拠点を空爆──対テロ戦略の最新動向
実際、イスラム国の公式プロパガンダでは、ISSによる攻撃に関与するメンバーの国籍数が誇張され、ISSの攻撃や作戦についての映像が公開される頻度が増している。
ちなみに、スウェーデンの首都ストックホルムでは昨年より3月、テロ攻撃を計画していたソマリア人4人が地元警察に逮捕された。
容疑者たちはISSのメンバーと連絡を取っていたとされるが、スウェーデン国内にはかなりの数のソマリア人コミュニティが存在し、スウェーデン警察はソマリアに渡航してISSに参加しようとするスウェーデン国民が急増していると警鐘を鳴らした。
また、ISSはイスラム国のグローバルな活動を継続させるにあたり、財政的なハブとしても機能している。
ISSは地元の企業や港湾に対する広範な恐喝行為を通じて得た収益の一部を、アフリカに拠点を置く他のイスラム国支部やアフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州(ISKP)、またトルコや南アフリカなどに存在するイスラム国支持者たちに暗号資産などを通じて送金している。
2023年1月に米軍によって殺害されたISSの資金担当責任者は、ISKPの組織力拡大のため資金を送っていた。以前、ISSはイスラム国ネットワークの中でも小規模な組織だったが、今日ではそのネットワークを維持する上で主要な財政的役割を担っている。
無論、米軍やソマリア政府はISSの規模拡大を抑える上で空爆などを継続し、ISSとアルシャバブは敵チア関係にあることから、ISSが国際安全保障上の深刻な脅威となる現実的可能性は低い。
トランプ政権の外交・安全保障政策の最重要課題は対中国であり、ウクライナや中東など国家間イシューがそれに続き、対テロの優先順位がそれらを抜くことは基本的になかろう。
対外的攻撃性を示すイスラム国ホラサン州
しかし、1つ教訓とすることがある。それは近年のISKPの動向だ。
昨年3月、ロシア・モスクワ郊外にあるコンサートホールに武装した男4人組がホール内に押し入り、観客に向けて銃を無差別に乱射し、140人以上が死亡するテロ事件が発生した。
同年1月にはイラン南東部ケルマンでも革命防衛隊幹部の追悼行事を狙った大規模な自爆テロ事件が発生し、100人あまりが犠牲となった。
両事件で実行犯たちはタジキスタン国籍で、ISKPの犯行とされている。
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