スタートアップ経営者が感じる「退職代行」のやるせなさ
日韓でサービスが急拡大している退職代行だが・・・ KYONNTORA/ISTOCK
<ブラック労働や職場への違和感などから若者の利用が広がる退職代行サービス。スタートアップ企業の経営者として感じるモヤモヤ感と働く意味>
始まりよりも別れが大事だとよく言われる。相手としっかり会話し、お互いが納得できる形で別れるのが一番理想だろう。スタートアップ企業の経営者として最近、そんなことを考える機会があった。
今年に入り、本人に代わって会社に退職の意思を伝える「退職代行サービス」が注目を集め、利用者数が急増しているという話を聞くと、なんだか寂しくなってしまった。
日本でスタートアップ企業を経営している身として、退職代行をどう受け止めるべきか。もしもこのサービスを使い、退職希望を出す従業員がいたら、時代の変化だと受け止めるべきか。まだ釈然としない。
特に、退職代行は若者の利用者数が非常に多いという。そのため、自社の若い社員たちに「周りにサービスを利用した人はいる?」と聞いてみたら、「まだいないけど、検討したことのある人は結構いる」という。
その理由は「辞めると言うと何を言われるか怖い」「伝えること自体がメンタル的に大きな負担になる」「辞めるのに労力を使いたくない」などなど。こう聞くと、やっぱり時代の変化を感じてしまう。つまり、若者の転職への意識とともに、働くなかで何を大事にしているのかがこの十数年で大きく変わったのだろう。
私の会社はスタートアップであり、従業員のほとんどが20代と30代前半だ。彼らとコミュニケーションを取るなかで感じるのは、誠実な人も多いし、頑張りたい気持ちはあるけど、メンタルケアができておらず、そもそも自信がなくてキャリアをめぐる不安や悩みが想像以上に大きいことだ。
もう少し前の世代であれば、日本も韓国も1つの会社で長い期間をかけてキャリアを築くことが主流といえば主流だった。ただ、今の若者は転職してキャリアアップすることが主流で、「まず働いてみて、自分に合わなければ辞めればいい」という気持ちで入社する人も少なくない。
だからこそ「疲れる」「つらい」「めんどくさい」という感情に敏感になり、退職する際に負の感情を避けたい若者が多いのではないか。今の時代、1つの会社で何十年も働くことが正解ではないかもしれない。でも人生は長い。この先何が起きるか分からないのに、人生の句点を打つ時を大事にしていない気がして、とても残念な気持ちになる。