ジャニーズ問題が日本社会に突き付けた、性教育とメディアの「タブー体質」
YUICHI YAMAZAKI/GETTY IMAGES
<性犯罪の知識のない未成年を守るには、性教育をタブーにしないこと。そして被害者が日本のメディアではなく、海外メディアに求めた「信頼」の意味を考えるべき>
今年3月に放送された英BBCのドキュメンタリーのおかげで、多数のアイドルが所属するジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川の性犯罪疑惑が日本の大手マスコミでも報じられるようになった。
ドキュメンタリーを担当したBBCのジャーナリストが日本外国特派員協会で記者会見を開き、その後、被害者の2人も自身のつらい経験を語った。
彼らはジャニー氏のおかげでエンターテインメントの世界に入り、今もジャニー氏を尊敬していると話す。これは不思議なことではなく、性的な目的を隠して大人が未成年を手なずける「グルーミング」の結果だ。
ようやく今、ジャニー氏の「隠れた暗い姿」が見えるようになったが、たとえ証拠が出てきても本人は亡くなっているので、捜査、起訴、裁判といった流れにはならない(写真は2019年逝去時の報道)。
被害者にとって可能な手続きも限られている。それでもBBCの取材や被害者の証言をきっかけに、政治家なども動き始めた。
私はこの件をそれほど取材していないが、海外の記者の立場からと一個人的に考えたことを記してみたい。
まず、証言した元ジャニーズJr.の人々が、ようやく被害について話せるようになったのはとても良かったと思う。ただ、話さない、話したくない人もいるので、過剰な取材で無理やり告白させるリスクについては注意すべきだ。
権力のある大人と、弱い立場の子供や若者の間に危険な関係が生じること、性犯罪が起きることをどう防ぐか?
小学校から子供の権利の教育と、性教育を行うことが大切だ。当時中学生だった元Jr.の彼らは強制的な性行為が何か分からず、犯罪であることも知らなかった。
ジャニーズ問題をきっかけに、学校現場での正しい性教育の必要性が広く理解されてほしい。親も子供に性被害とはどういうものかを教えないといけないが、多くの親はどうすればいいか分からず悩んでいる。これについては、自治体が専門家の知識を借りて親向けの講座を設ければいい。
同じような事件が再び起こらないように法律の面で何ができるか。児童虐待防止法改正を求める声があったが、今国会では見送られた。