ジャニーズ問題が日本社会に突き付けた、性教育とメディアの「タブー体質」
私はそれよりも、今すぐ被害者を救うために現行の法律でどのような対応ができるかをきちんと確認すべきだと思う。重要なのは被害を受けている子供の精神状態や命を守ることで、それは今年4月に発足したこども家庭庁の急務ではないか。
子供への強制性交等罪や強制わいせつ罪が最も多い組織といえばカトリック教会だ。
フランスで21年に公表された報告によると、1950~20年の70年間で、3000人前後の神父とその他関係者が性加害を行っており、約33万人の未成年の被害者がいた。
数人の加害者は刑事裁判で懲役判決などを受け、一部の被害者は賠償金をもらっている。それでも残念なことに、フランスでもまだまだ悩みを抱えた被害者は多く、対策が足りない状況だ。
今回、被害者たちがマスコミに語った言葉を聞くと、いかにつらい経験だったかが分かる。今まで彼らがどこにも相談できなかったことは非常に大きな問題だ。
また、なぜ彼らは最初にBBCに話をしたのかといえば、日本のマスコミより信用できると判断したからだろう。会見をした場所も外国特派員協会だった。
被害者の1人であるカウアン・オカモト氏は「こうやって記者会見を開くことで、日本(のメディア)が取り上げなかったとしても世界で取り上げていただける」と語っていた。
つまり、日本のマスコミの信頼性が問われている。新聞やテレビは、タブーとされている事実も、国民の知る権利や国民の利益のためには迷いなく報じるべきだ。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。Twitter:@karyn_nishi