コラム

そろそろ「子どもに優しい日本」で誇れる社会を目指すとき

2023年01月06日(金)13時42分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
ベビーカー

Thank you for your assistant-iStock

<保育園での虐待、ベビーカーの拒否、子どもの声へのクレーム。子どもに厳しい社会では、子育てはしづらい。街の清潔さやロッカールームを掃除する美談だけでなく、心から誇れる社会とは?>

このところ子どもがひどく扱われるニュースを耳にすることが多い。保育園児が車に置き去りにされて死亡する事件が続いたし、保育園での虐待や、ベビーカーのバス乗車拒否も話題になった。家族の虐待で幼い子が死んでしまうニュースも後を絶たない。

先日、未就学児を持つ友人から電話があった。家族で焼肉屋にいたとき、大きい声ではないが子どもがママ、ママと何回か連呼したところ、後ろの席の中年男性が聞こえよがしに「うるせぇ」だとか英語で「シャットアップ!」などと言い、ついには子どもに聞かせたくないような汚い言葉で怒鳴られたそうだ。友人はショックを受けていた。

日本で子育てをしている親は少なからず感じているはずだが、どうやら子どもはこの社会では厄介者扱いのようだ。騒ぐし泣きわめくし聞き分けがない、いないとどんなにせいせいするか。大人たちの多くがそう思っていると感じられてしまう。

どんな大人も昔は子どもで、ずっと行儀よくしていられたわけはないのに、大人になると子どもに厳しく、冷たい。保育園が増え、保育料が無償化され、児童手当が拡充されても、日本は非常に子育てがしづらい社会である。

私の別の友人家族は、1年間のカナダのトロント滞在から帰国した。子どもたちは英語もほとんどしゃべれない状態で現地の小学校に通い始めたのだがすぐになじみ、日本よりも楽しく過ごし、親から帰国日を知らされると泣いて嫌がったそうだ。

なぜなら、カナダのほうが授業も楽しく、遊ぶ所がたくさんあり(公共のバスケットボール場やサッカー場が使い放題)、どんなに騒いで遊んでも誰にも怒られない。子どもにとっては最高の環境だったからだ。

最近私にも発見があった。日本に住む中国人家族の優しさである。私は最近転居したが、近所に娘の中国人の友達がたくさん住んでいることに気が付いた。子どもたちは毎日のように放課後や週末に集まり、公園や誰かの家で遊ぶのだが、中国人の家族はとにかく人付き合いがよく、おおらかで優しい。

暗くなっても子どもが友達と離れたくなくてグズグズしていると「ウチで夕飯を食べさせるから大丈夫よ」とか「お風呂入ってから送っていくよ」と言ってくれる。どの家族も特に子ども、それも他人の子どもにも優しい。彼らといると、私はここが日本だということを忘れてしまう。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story