語学力を伸ばすのに重要な「エージェンシーを持つ」とは、どういうことか
COURTESY OF JAPAN SELF-DEFENSE FORCE BASED IN DJIBOUTI
<なかなか改善されない日本人の「英語が苦手」問題だが、世界的に注目される「エージェンシー」を持つことが助けになるはずだ>
日本人は英語力が低いって本当? 信じたくない。でもそれが現実のようだ。世界最大級の留学・語学教育企業イー・エフ・エデュケーション・ファーストの調査では、日本の英語力は2019年に100カ国中53 位だった。翌20年には100カ国中55位。最新報告(21年)が11月に出た。日本は112カ国中78位! なんと悪化している。
まあ、困った。もうすぐ日本の高校生向けに第2言語習得について講義をする予定だが、彼らは事実上の現代リンガ・フランカ(世界共通語)を勤勉に学習しているらしい。どのように助言すればよいのだろう。ランキングの順位を知れば、彼らの夢はつぶれてしまいそうだ。でも、不都合な真実を伝えないわけにはいかない。
よく指摘されることだが、問題の1つは受験英語に偏った教育法にある。生徒はテストでよい点を取るために、教えられたままに暗記や訳読をする受け身の座学になることが多い。最近はリスニングや会話の練習も導入されているが、まだまだ使えるコミュニケーションツールとして扱われているとは言えない。
ただ、そもそも英語の習得は日本人にはけっこう大変。語順や発声法の違いは有名だけれど、何といってもLとRの聞き分けが飛び抜けて難しい。
驚いたことに、知り合いの日本人言語学者も、英語圏で数十年間生活しているのに区別ができないと言う。ある程度は訓練で克服できるという研究もあるが、多くの人にとって、LとRの聞き分けはずっと抱える問題になるだろう。
語学嫌いだった僕の成功の秘訣
もしも慰めになるのなら、生徒たちに自分の失敗談を語ろう。今の僕は英語と日本語に加え、スペイン語、フランス語、中国語などなど、いろいろな言語を操っている。でも学生時代、実は挫折も経験している。中学校でドイツ語を勉強した際、少しも面白くない宿題を大量に出されたこともあって、一時期は語学嫌いになってしまった。
なぜその後、多言語の習得に成功したか。一言で言えば「エージェンシー(agency)」を持って挑んだからだ。エージェンシーとは「自ら考え、主体的に行動して、責任を持って社会変革を実現していく姿勢・意欲」のこと。初めて聞く人もいるだろうが、今これが国際的に注目されている。