コラム

語学力を伸ばすのに重要な「エージェンシーを持つ」とは、どういうことか

2022年01月05日(水)20時55分
トニー・ラズロ
ジブチ自衛隊へのメッセージ

COURTESY OF JAPAN SELF-DEFENSE FORCE BASED IN DJIBOUTI

<なかなか改善されない日本人の「英語が苦手」問題だが、世界的に注目される「エージェンシー」を持つことが助けになるはずだ>

日本人は英語力が低いって本当? 信じたくない。でもそれが現実のようだ。世界最大級の留学・語学教育企業イー・エフ・エデュケーション・ファーストの調査では、日本の英語力は2019年に100カ国中53 位だった。翌20年には100カ国中55位。最新報告(21年)が11月に出た。日本は112カ国中78位! なんと悪化している。

まあ、困った。もうすぐ日本の高校生向けに第2言語習得について講義をする予定だが、彼らは事実上の現代リンガ・フランカ(世界共通語)を勤勉に学習しているらしい。どのように助言すればよいのだろう。ランキングの順位を知れば、彼らの夢はつぶれてしまいそうだ。でも、不都合な真実を伝えないわけにはいかない。

よく指摘されることだが、問題の1つは受験英語に偏った教育法にある。生徒はテストでよい点を取るために、教えられたままに暗記や訳読をする受け身の座学になることが多い。最近はリスニングや会話の練習も導入されているが、まだまだ使えるコミュニケーションツールとして扱われているとは言えない。

ただ、そもそも英語の習得は日本人にはけっこう大変。語順や発声法の違いは有名だけれど、何といってもLとRの聞き分けが飛び抜けて難しい。

驚いたことに、知り合いの日本人言語学者も、英語圏で数十年間生活しているのに区別ができないと言う。ある程度は訓練で克服できるという研究もあるが、多くの人にとって、LとRの聞き分けはずっと抱える問題になるだろう。

語学嫌いだった僕の成功の秘訣

もしも慰めになるのなら、生徒たちに自分の失敗談を語ろう。今の僕は英語と日本語に加え、スペイン語、フランス語、中国語などなど、いろいろな言語を操っている。でも学生時代、実は挫折も経験している。中学校でドイツ語を勉強した際、少しも面白くない宿題を大量に出されたこともあって、一時期は語学嫌いになってしまった。

なぜその後、多言語の習得に成功したか。一言で言えば「エージェンシー(agency)」を持って挑んだからだ。エージェンシーとは「自ら考え、主体的に行動して、責任を持って社会変革を実現していく姿勢・意欲」のこと。初めて聞く人もいるだろうが、今これが国際的に注目されている。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、香港の火災報道巡り外国メディア呼び出し 「虚

ワールド

26年ブラジル大統領選、ボルソナロ氏長男が「出馬へ

ワールド

中国軍機、空自戦闘機にレーダー照射 太平洋上で空母

ビジネス

アングル:AI導入でも揺らがぬ仕事を、学位より配管
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story