コラム

日本の雑誌は私の「教材」だった──北京でグラビアを知り、池袋で配送アルバイトをし、今も週刊誌を愛読中

2021年12月27日(月)17時10分
周 来友(しゅう・らいゆう)
雑誌・新聞を売る売店

PICTURE ALLIANCE/AFLO

<日本語学校や大学で身に付けたのは日本語の基礎、語彙や表現を豊かにしてくれたのは雑誌だった>

初めて日本の雑誌を目にしたのは1980年代半ば、北京の大学に通っていた時だった。改革開放が始まり、海外のものがどんどん入り始めた時代だ。

私は国費留学や企業派遣で来ていた日本人留学生と親しくなったが、彼らは家族や友人から種々雑多な雑誌を送ってもらっていた。中国ではお目にかかれないヌードグラビアのページが当時の私にはなんとも刺激的だった。

そんな私が今、ニューズウィーク日本版という日本の雑誌でコラムを書いているのだから不思議なものだ。振り返ってみれば、私は多くのことを雑誌から学んできた。間接的にだが、来日後の生活を成り立たせてくれたのも日本の雑誌だった。

1987年に来日した当初、幸いにもそれなりの資金があった私は、午前中は日本語学校で授業、午後は図書館で自習と勉強漬けの日々を送っていた。ところが半年もたつと資金も底を突き、大半の留学生同様、生活費を稼がなければならなくなった。

そんなとき見つけたのが、駅の売店やコンビニに雑誌や新聞を配送する仕事だ。東京即売という会社で、本社は東池袋にある。そこから2~3分歩いた所に寮があり、その4畳半一間から職場や学校に通う生活が始まった。

起床は毎朝4時半。歩いて会社に向かい、商品の仕分け・梱包をしてからトラックに乗る。そして駅の近くで降ろされると、雑誌や新聞を積んだ背負子(しょいこ)と呼ばれる運搬具を背負い、駅の階段を上ったり下りたりしながら配送するのだ。

たしか時給は1600円だった。寮は光熱費込みで1万円ぽっきりだったから、生活するには十分な額だ。朝が早い肉体労働ではあったが、汗をかいた後にシャワーを浴び、すがすがしい気分で登校していたので、むしろ勉強に集中できた。

日本語学校から文教大学へと進学しても、東京即売でのアルバイトを続け、この生活は5年に及んだ。

当時日本の雑誌はとても元気があり、背中の重みからもその勢いが感じられた。この仕事ならではの役得もあった。ファッション誌から写真週刊誌、漫画誌まで、ありとあらゆる雑誌を無料で読めたのだ。

プロフィール

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・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
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