運動だけでなく社交の場でもあった「心の拠り所」ジムを奪わないで
5月末で閉鎖する予定だった私たちのジムは、3回目の緊急事態宣言のため突然、4月末でそのまま終了ということになった。ジム仲間からは失望や悲しみのメッセージがスマートフォンに届く。
なんとかこのコミュニティーを継続させたいという気持ちで、みんな運動もサウナもマスクを着け、小まめに手も器具も消毒して頑張ったのに。少なくとも、うちのジムで感染者は出なかったのに。そう口々に言い合っている。近所に新しくできたおいしいお店の情報を交換したり、お互いにちょっとした食べ物を配り合ったりすることもなくなるだろう。近所のおばさんが作った梅干しも、もう食べられない。
失われた多くの命のことを考えれば、ジムの閉鎖は被害のうち軽いほうだと言えるだろう。それでも今の私は、日本全国でスポーツクラブや趣味のイベント事業、常連客の集まる飲食店などを運営されている皆さんに、こう言いたい。「皆さんの事業がつくり出すコミュニティーに寄り掛かって生きている人はたくさんいますよ。そして、外国人を含め、人的ネットワークの資源が小さい人ほど、皆さんを頼りにしている度合いは大きいですよ」
まだしばらく、人が集まって活動をする形の事業にとっては苦しい時期が続くだろう。私たちのジムは持ちこたえられなかったが、生き残っているコミュニティー形成型ビジネスの皆さんには、あともう少し、なんとか頑張ってほしい。
李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。
2024年12月31日/2025年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2025」特集。トランプ2.0/AI/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済…[PLUS]WHO’S NEXT――2025年の世界を読む
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