コラム

コロナ対策に100%の正解はない 「人命か経済か」では図れない「GoToトラベル」の真価

2020年09月11日(金)16時15分
李 娜兀(リ・ナオル)

日本でも韓国でも「GoTo」について安倍晋三政権が「人命か経済かどっちかという選択肢の中、経済を取った」と批判する論調があった。ただ、日本政府の説明によれば、「GoTo」に参加したのは420万人で、事業に登録したホテルや旅館で感染が見つかったのは16人しかいなかったそうだ。きちんと対策を取ったホテルや旅館でのリスクは限定的だろうと、自分の体験からも思う。

一方、日本の観光業界の経営状況はとても厳しいという。日本の素晴らしい温泉旅館やホテルがなくなるのは困る。社会的距離をちゃんと確保できる環境の下でなら、旅行促進も悪くないのかもしれない。

水際対策に成功した台湾などと違い、アメリカや欧州ほどではないものの市中感染が広がった日本、そして最近また感染者が急増中の韓国でも、完璧なコロナ根絶は難しい。そうした状況では「人命か経済か」のどちらを選ぶかといった単純化した図式は当てはまらず、いかにどちらの被害も最小にするかが大切なのだろう。

優柔不断でリーダーシップ不足に見える日本政府のやり方も、コロナ対策という問いに100%の正解はない以上、仕方がないことなのだろうと今は思っている。

magTokyoEye_Lee.jpg李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。

<2020年9月8日号掲載>

【関連記事】第2波でコロナ鬱、コロナ疲れに変化、日本独自のストレスも
【関連記事】外国人もコロナ支援の対象にした日本は、もっとそれをアピールするべき

【話題の記事】
大丈夫かトランプ 大統領の精神状態を疑う声が噴出
中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......?
地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される
中国は「第三次大戦を準備している」
ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死

20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナのNATO加盟、同盟国説得が必須=ゼレン

ワールド

インド中銀がインフレ警戒、物価高騰で需要減退と分析

ワールド

米国、鳥インフルで鶏卵価格高騰 過去最高を更新

ワールド

トランプ氏次男妻、上院議員への転身目指さず ルビオ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story