今年の春節は史上最悪、でも新型肺炎で「転じて福」となるかもしれない
実は訪日リピーターのマナーは格段によくなっている。しかし依然増え続けている、作法を知らない初来日の地方出身者の中には「お金を落としているのになぜ感謝されないのか」と考える者がいるのも事実だ。
ただ、今回の騒動をきっかけに、こうした思い上がった考えも改められるんじゃないかと私は期待している。中国で日本の株がぐんと上がっているからだ。
マナーの問題や新型肺炎の感染拡大を背景に過激な意見も目につくが、それ以上に目を引くのが「武漢加油」「中国加油」(がんばれ)という言葉だ。
中国に医療用マスクなどを送る動きが加速している。日本政府が中国政府に気を使っている面もあるだろうが、国としても、国境を閉鎖したロシアや北朝鮮、厳戒態勢を取る韓国などと比べると、日本の対応は冷静で優等生的だ。正直、自国民を守るために、帰国者の隔離などをもっと徹底したほうがいいのではないかとも思うが、中国人の心証は悪くないだろう。
自宅に籠もらざるを得ず、暇を持て余した中国人たちは見ている。中国が危機に陥っているとき、日本政府や日本人が何をしてくれたのかを。史上最悪の春節が、日中関係にとって「災いを転じて福となす」となることを私は願っている。
周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「ゆあチャンネル」)としても活動。
<2020年2月18日号掲載>
2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。