コラム

反アマゾン:独立小売業の変革を推進する「アンカーストア」の急成長

2022年03月02日(水)15時00分

そのためには、独立系小売業者が大企業の波に抵抗し、雇用を創出できるような技術的なツールを提供することが重要だと、ダディフレ氏は述べている。アンカーストアのオンライン・マーケットプレイスは、ブランドにとって最初は無料だが、後に売上に応じて手数料が課される。また、送料は無料なので、小売業者にとって、少量の注文でも損失はない。直近の2億5000万ユーロの資金獲得で、同社はヨーロッパ全域にリーチを広げ、より多くの国と契約したいとしている。

ダディフレ氏は、「私たちの加盟店やブランドは、ビジネスをよりよく管理するためのソフトウェアに対する大きなニーズを持っている」と述べている。

アマゾンとの共生

アンカーストアのプラットフォームは、小売店にオリジナリティを取り戻すかもしれないが、アマゾンのような巨大企業を倒すことはできない、とダディフレ氏は述べる。むしろ、この2つのモデルが混在することで、将来のショッピングのあり方が形成されると彼は予測する。オムツやインクカートリッジを夕方か明日までに入手する必要がある場合、それが最も安い方法であろうとなかろうと、アマゾンは無敵であり、アマゾンは今後も成長し続けるだろう。

「しかし、週末に散歩に出かけ、素敵な商品を発見し、素敵な贈り物をしたいのであれば、私にとって、コンセプトと情熱を持った独立した小売業者に勝るものはない」と、ダディフレ氏は述べた。

今後、アマゾンの一人勝ちに対抗でき、成功するのはこの第二の小売セグメントであり、この二つのビジネスモデルの中間に位置する企業はおそらく消滅してしまうだろうと彼は考えている。

「私たちは、この第二のセグメントを支援したい。それは、可能な限り低価格で最大の販売量を提供することではなく、オリジナルで本物の製品を求める顧客に特別な体験をもたらすために戦う独立系小売業者のことなのです」と、ダディフレ氏は語っている。

欧州ではじまった独立系ブランドと小売業態に向けたDXこそ、地域の循環経済の柱となるかもしれない。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

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