コラム

ドイツは「緑の首相」を選ぶかもしれない

2021年04月28日(水)19時00分

ドイツ緑の党初の首相候補に指名されたアナレーナ・ベアボック (C)The Alliance 90/The Greens

<9月に行われるドイツの連邦総選挙、緑の党への支持率がトップになり、次の連立政権に緑の党が含まれないというシナリオは考えにくくなってきた...... >

緑の党の首相候補

ドイツの緑の党が勢いを増している。4月19日、緑の党は、流暢な英語を話し、自転車に乗り、気候変動に立ち向かうグリーン経済の推進者であるアナレーナ・ベアボック(40)をドイツの次期首相候補に指名した。

ベアボックが指名された直後の世論調査では、緑の党への支持率がトップになった。9月に行われるドイツの連邦総選挙までには、予測できない出来事が起こる可能性もあるが、次の連立政権に緑の党が含まれないというシナリオは考えにくくなってきた。

緑の党は、その41年の歴史の中で初めて、党の首相候補を指名した。現状、メルケル首相の政権与党であるキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)に後れを取っているが、緑の党は、世論調査で20%以上の安定した支持率を示しており、メルケル首相の保守勢力に迫る勢いである。メルケル首相の連立相手である中道左派のドイツ社会民主党(SPD)が、近年支持率の急落で低迷していることもあり、緑の党の存在感は際立っている。

9月の連邦選挙で緑の党を率いる野心的な女性とは誰なのか?そして、アンゲラ・メルケルの後を受け継ぎ、ドイツの次期首相になる可能性は現実的なのか?2児の母であるアナレーナ・ベアボックは、今、ドイツで最も話題の女性である。

アナレーナ・ベアボックとは?

1980年12月、北ドイツのハノーファーで生まれた彼女は、幼児期をニュルンベルクで過ごした後、ニーダーザクセン州のパテンセンという小さな町に移り住み、そこの農場で育った。16歳の時、米国のフロリダに交換留学生として1年間滞在した。彼女は幼少期から青年期にかけてトランポリンに熱中し、ドイツ選手権で銅メダルを3回獲得した。ハンブルク大学で政治学と法律を学び、その後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでは国際公法の修士号を目指した。

政治の世界に入ったのは、2004年の欧州選挙で緑の党のキャンペーンに参加し、その過程で現在の夫と出会い、2005年に緑の党に入党した。緑の党の欧州議会議員であるエリザベス・シュローダーの下で働き、同年、英国国際比較法研究所で研修を受け、その流暢な英語力で外交政策の専門家として認められるようになった。

2009年の連邦議会議員選挙に落選した後、緑の党で活動する傍ら、ベルリン自由大学で国際公法の博士号取得のための勉強を始めた。2013年、ベアボックはドイツ連邦議会議員に2度目の挑戦で当選した。

1期目の任期中は、緑の党の気候変動政策のスポークスマンを務め、経済・エネルギー委員会のメンバーとして、ドイツの「エネルギー転換」政策に貢献した。ベアボックは2017年に2期目の連邦議会議員に再選された。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、北朝鮮の金総書記と「コミュニケーション

ビジネス

現代自、米ディーラーに値上げの可能性を通告 トラン

ビジネス

FRB当局者、金利巡り慎重姿勢 関税措置で物価上振

ビジネス

再送-インタビュー:トランプ関税、国内企業に痛手な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story