コラム

電気自動車からドローンまで「次のIT」を支えるあの電池

2016年05月25日(水)11時45分

 日本の経済産業省がまとめた「自動車産業戦略」によると、電気自動車やプラグイン・ハイブリッドの比率を2020年に全体の15〜20%、2030年に20〜30%に拡大するとしている。それゆえ、航続距離拡大に向けた次世代リチウムイオンバッテリーの開発が日本を代表する大企業で活発化している。

「走る巨大バッテリー」電気自動車の性能と直結

 そんななか、米国では電気自動車界の雄テスラ・モータースが、いままで協業と言っても過言ではないパナソニック製のバッテリー使用だけでなく、より高性能のLG製を採用する可能性がある、と発表し業界を震撼させた。日本が優位だと言われていたバッテリー技術が、今後は韓国、そして中国が抜きん出る可能性も否めない。

 なにしろ電気自動車は、「走る巨大バッテリー」同然であり、次世代バッテリーの性能そのものは、電気自動車の性能に直結する。それゆえ、一攫千金を狙う人が多いカリフォルニアや広東では、あたらしい素材を使ったバッテリー・スタートアップが急増しているのが、現在だ。

 今後、モニターのなかだけだった情報空間が現実化する鍵は、バッテリーの進化そのものにかかっているのは間違いないだろうし、人々のライフスタイルを大きく変えていくことにもなるだろう。ちなみに現在、中国の電気自動車の生産量は、それ以外のすべての国の合計を抜いている。

 さて、冒頭にお話ししたドローン・プロジェクトのためのバッテリー輸送は、結果的に日本に渡航および帰国予定の人たちで小分けにして、問題のない範囲の機内手荷物としてバッテリーを運び込むことに至った。違法薬物の密輸を英語で「Drug Smuggling」と言うので、僕はこの計画を「Battery Smuggling」と名付け、作戦を決行。無事に運び込むことに成功し、撮影を終えることができた。

 いよいよ夏も近くなって旅行シーズン到来間近。どなた様もリチウムイオンバッテリーの機内預け入れには、ご注意ください。

4月末に富士山の麓で行われたドローンのパフォーマンス。クリエイティブ・ディレクターは高城剛氏。

プロフィール

高城剛

1964年生まれ。 日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。2008年より、拠点を欧州へ移し活動。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジ―を専門に、創造産業全般にわたって活躍。また、作家として著作多数。2014年Kindleデジタルパブリッシングアワード受賞。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story