コラム

「拡張するインターネット」としてのドローン

2016年04月07日(木)16時10分

 今の状況は、1993年のインターネット黎明期とよく似ている。当時のインターネットも電子メール程度しか本格的には活用されていなかったが、今日のドローンも、スイス国立郵便局やシンガポール・ポストが郵便配送として活用をしている程度だ。Yahoo!もAmazonもグーグルもなかった1993年、今日のインターネットを取り巻く環境を誰が想像できただろうか? 同じように今日、これからやってくる「拡張するインターネット」を思い描くのは難しいのかもしれない。

Swiss Postのドローン郵便配送の実証実験  SWI swissinfo.ch-Youtube


 日本で(もしくはいまだに世界のほとんどで)ドローンといえば、危険な物として「規制対象筆頭プロダクツ」である。総理官邸や世界遺産に墜落したり、もしくは激突した例は、この半年だけも枚挙にいとまがない。確かにそれは、ある面ではその通りだ。なにしろ、誰もが免許もなく好き勝手に操縦しているのだから。

「現実世界」をキャプチャーするドローン

 しかし、「拡張するインターネット」としてのドローンは、少しばかり違う。決まった航路を誤差数センチで飛び、時にはモノを運び、時には「リアルな情報」を捕まえてくる。それは、音楽や映画、書籍、そしていまご覧いただいているこの記事のようにデジタル化されたものではない「物理的に存在する」モノや情報を運び、どんなに優れた検索エンジンでも探すことができない「現実世界」をキャプチャーすることを可能とするシステムの登場だ。すなわち、これから二十年かけて、インターネットは重力に挑戦することになる。

 いまから3年ほど前に、僕が「もうじきカメラが空を飛びはじめますよ」と話すと、多くの人たちは、聞く耳を持たなかった。見たことがない、新しいテクノロジーは人によっては恐れる対象となる。だが、本当に恐れるべきなのは「ダブル・ドッグイヤー」と呼ばれるドローン業界の急速な進化スピードに乗り遅れることだと思う。日本のいままでの二十年のように。だから、もう一度話そう。「もうじきインターネットが空を飛びはじめますよ」と。

今年1月に行われたCES2016で、インテルのブライアン・クルザニッチCEOが、基調講演でドローン「Typhoon H」を紹介した。 Innovative UAS-YouTube

プロフィール

高城剛

1964年生まれ。 日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。2008年より、拠点を欧州へ移し活動。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジ―を専門に、創造産業全般にわたって活躍。また、作家として著作多数。2014年Kindleデジタルパブリッシングアワード受賞。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官

ビジネス

午前の東京株式市場は小幅続伸、トランプ関税警戒し不

ワールド

ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ

ワールド

プーチン大統領と中国外相が会談、王氏「中ロ関係は拡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story