トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半導体産業の「チョークポイント」
Hard Tech Realities
トランプは3月の議会演説でCHIPS法を「恐ろしい、恐ろしいもの」と呼び、その廃止を迫った。しかしブルームバーグの報道によれば、今はCHIPS法の税制優遇措置を維持しつつ関税攻撃もかける方針に転じたようだ。
ちなみにピーターソン国際経済研究所(PIIE)は今年1月、半導体の国内生産を促すという点に関する限り、関税をかけるだけではCHIPS法によるインセンティブほどの効果を期待できないと報告している。CHIPS法のインセンティブと関税を併用すれば米国内における製造業の復活を加速できるかもしれないが、一方で関税はアメリカの企業にも消費者にも犠牲を強いる可能性が高い。
そもそもアメリカの半導体需要は現時点での国内の供給力をはるかに上回っているため、関税の負担があっても輸入に頼るしかない。例えば技術的に最先端の半導体の約90%は、TSMC(台湾積体電路製造)に代表される台湾企業が製造している。
アメリカ政府はまた、いわゆるレガシーチップ(技術的に最先端ではないが、パソコンや家電製品などに必ず組み込まれている半導体)の分野における中国勢の圧倒的なシェアにも懸念を強めている。
「いま懸念すべきは、中国で(レガシーチップの)生産が爆発的に増えている事実だ。中国は膨大な量の半導体製造装置を購入し、ものすごい量を生産している。このままだと、いずれは一種の生産過剰になり、結果としてレガシーチップの急激な値崩れにつながる恐れがある」とPIIEのマーティン・コルゼンパ上級研究員は言う。「行き着く先は(アメリカの半導体)企業の倒産の連鎖ではないか」