ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税...トランプは何を勘違いしている?
ABSURD TARIFFS WILL BACKFIRE
だが40年前には日本の製造業に対するバッシングが苛烈で、トヨタ車や日産車が唾を吐きかけられ、傷つけられることも多々あった。しかし今は、日本車がアメリカのどこを走っていても、誰も気にしない。製造あるいは組み立ての大半がアメリカ国内で行われているためだ。24年に日本勢が米国内で生産した自動車は300万台を超え、日本からの輸入車の2倍以上に上った。
アメリカの対日貿易赤字は依然として多額(約680億ドル)だが、赤字額は徐々に減ってきている。今年2月に訪米した石破茂首相は、対米直接投資の累計額で日本勢は5年連続で首位に立っていると主張し、トランプの機嫌を取るため、対米投資をさらに増やす意向も表明した。
しかしトランプは、日本車も含めた輸入車と部品の全てに25%の追加関税を課すと発表。石破は「理解し難い」と失望を示した。
保護主義の成功は限定的
「80〜90年代にわが国が日本にかけた圧力が、多くの日本企業に対米投資を促したことは間違いない」と言ったのは米シンクタンク外交問題評議会(CFR)のマシュー・グッドマン。当時は米財務省に在籍し、財政のプロとして在日アメリカ大使館に赴任していた時期もある。彼に言わせると、その圧力の結果として「日本企業はアメリカの保護主義の壁の内側に入る道を選択した」。
しかしトランプは、この成果に気付いていないらしい。4月2日の関税宣言では「日本では自動車の94%が日本製だ」と不満を漏らし、日本に24%の追加関税を課した。