トランプに捨てられ現実を直視...ロシアの脅威を前に「嘆かわしいほど怠慢だった」と反省する欧州は「手遅れ」なのか

DEFENDING EUROPE

2025年4月4日(金)19時58分
エリー・クック(安全保障・防衛担当)、マシュー・トステビン(シニアエディター)

ただ問題は、一般市民は防衛力強化の必要性をさほど認識していないことだ。英世論調査機関ユーガブが今年1月にイギリスで行った調査では、福祉予算などを削ってでも防衛費を増額すべきだと答えた人は30%で、公共サービスの改善を優先すべきだと答えた人は35%に上った。

今年に入りユーガブが行った別の調査では、半数以上のイギリス人が、軍備拡大のための増税には反対だと答えた。日々同僚らと安全保障について議論している軍人や国防部門の官僚らにすれば、現状では防衛費の増額は切実なニーズだが、一部のNATO加盟国の国民にはそうした認識が浸透していないと、イギリス軍高官と米政府の元職員は言う。


ロシアの目と鼻の先にある国々の肌感覚はそれとは異なる。ラトビア、リトアニア、エストニアのバルト3国とポーランドは戦車の侵入を阻止するため、非常に目立つ形で防衛線を強化している。

NATOの最新の加盟国であるスウェーデンは昨年11月半ば、「危機や戦争に備えて」食料備蓄や避難方法などを解説したパンフレットを作成し全世帯に配布した。他の北欧諸国も同様のガイドラインを発表している。

ポーランド国防相によると、同国では全ての民間空港を軍事利用できるよう拡張工事などを進めているという。

デンマークは防衛費をGDP比3.2%と大幅に増額し、「大規模な再軍備」を進めている。23年には祝日の「大祈禱日」の廃止を発表。これにより税収が30億クローネ(約4億5000万ドル)増える見込みで、その全額を防衛費に回すという。

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