2カ月たっても消えない......ハンガリー「日本人女性DV死」への怒り
A Tragic Life
「もうすぐ帰国」その直前に事件は起きた
首を絞められた事件をきっかけに、みどりさんは子供たちを連れて日本に一時帰国する決断をした。ところが帰国直前、デイビッドは国境を越えた子供の不法な連れ去りを防ぐハーグ条約違反に当たる、と主張。みどりさんは上の子供を残していったん日本に帰国したが、結局ハンガリーに戻らざるを得なかった。
その後、不倫関係にあった女性と結婚するため、デイビッドはみどりさんに無理やり共同親権に合意させ、2023年3月に離婚した。共同親権を選んだのは、「共同で育てる」名目なら養育費を支払わなくていいからだった。離婚後、デイビッドはオランダに移住。一方、みどりさんと子供たちはブダペストに残され、経済的に困窮し、日本の実家からの仕送りと掃除の仕事で何とか生活していた。
離婚後もデイビッドは数カ月に1度、事前の連絡なくブダペストに戻り、みどりさん宅に滞在するようになった。その時も自分の食べ物だけを買い、困窮する家族には何も与えない。23年7月、みどりさんはパテント協会のスプロンズ弁護士に相談。ハーグ条約に違反せず日本に帰るため、共同親権から単独親権への切り替え申請を始めた。
これがデイビッドを激高させた。彼はみどりさんのパソコンを盗み、子供の学校や友人たちにみどりさんを中傷するメールを送り付けた。恐怖を感じた彼女は部屋の鍵を交換したが、アパートの持ち主はデイビッドの両親となっており、共同親権者だったことからも、警察はデイビッドが家の中に入ること認めた。
単独親権への切り替え手続きは今年1月にはほぼ終わり、3月には正式な許可が得られる見込みだった。
「もうすぐ日本に帰れる。もう何も望まない。ただ、子供たちと静かに暮らしたい」と帰国を心待ちにしていたみどりさん。そんな矢先の1月29日に事件は起こった。
事件後、地元警察は不適切な対応について謝罪し、担当した警察官5人の懲戒処分を決定した。DV問題の対応を訓練された警察官の増員や、過去1年間のDV報告の再調査にも踏み切った。