ロシアとウクライナの「エネルギーインフラ」が停戦交渉で焦点に
ガスパイプライン
ウクライナにはシベリアで採取されたロシア産ガスを欧州の顧客に供給するために建設された、東西を結ぶ総延長約1000キロのガス輸送システムがある。このパイプラインの輸送能力は年間最大1400億立方メートルで、これは欧州のガス需要の約3分の1に相当する。
しかし同パイプラインは近年輸送量が減少。ウクライナとロシアのガス輸送契約の最終年に当たる2024年のロシア産ガスの輸送量は140億立方メートルにとどまった。ウクライナはロシアの輸出収入を断つために輸送契約の更新を見送った。ただ、パイプラインは現在もウクライナ国内のガス輸送に利用され、スロバキアやハンガリーなどがロシア産ガスの供給再開を求めている。
ロシア特殊部隊は今月、このパイプラインを使ってロシア西部クルスク州に潜入した。ウクライナ軍が2023年8月から占拠していたロシア領の一部を奪還する作戦の一環だった。
ガス貯蔵施設
ウクライナには欧州最大級の地下ガス貯蔵施設がある。多くは西部に集中し、総貯蔵容量は300億立方メートル余りに達する。ウクライナ政府は繰り返し欧米企業に対し、この貯蔵施設の3分の1を利用するよう提案してきた。2023年には外国企業によるウクライナのガス貯蔵施設の利用は約30億立方メートルだったが、ウクライナのインフラを標的としたロシアの攻撃が激しくなったため、2024年にはほぼゼロに落ち込んだ。
こうしたガス貯蔵施設はトランプ政権発足以来、米国産LNG(液化天然ガス)の貯蔵拠点として活用する可能性が特に注目を浴びている。