さらなる暗黒地域が...ミャンマー詐欺拠点「大救出劇」で浮き彫りになったサイバー詐欺産業の脅威

SOUTHEAST ASIA’S SCAM INDUSTRY “CRACKDOWN”

2025年3月12日(水)17時00分
ジェイコブ・シムズ(ディプロマット誌コラムニスト)

しかし今後は分からない。タイ政府が自国の成長のために中国への依存度を高めているのは事実であり、そうであれば中立的なスタンスを維持するのは難しくなる。2月下旬にタイ政府は中国側の要求に屈して、ウイグル族の住民48人を中国に強制送還している。この地域の安全保障に関して中国の影響力が増している事実は否定できず、タイ政府がそれを無視することは不可能に近い。

もっと深刻なのはカンボジア

そう考えると、今回の犯罪拠点摘発と被害者「救出」を単純に喜ぶわけにはいかない。むしろ、この国境を越えたサイバー詐欺産業の脅威が浮き彫りにされたと考えるべきだ。


果たしてBGF/DKBAはタイ政府と良好な関係を保ちつつ、支配地域での犯罪ビジネスと人権侵害を黙認するという綱渡りの戦略を維持できるのか。この犯罪ビジネスで漁夫の利を得ているのが自らの仮想敵国だという事実に、果たしてアメリカとその同盟国は気付くだろうか。

そして、そもそも全員を「救出」できるのか。あの一帯には、強制的に詐欺行為に従事させられている人が何十万人もいるはずだ。

現状から浮かび上がるのは戦略的なジレンマだ。ミャワディでの摘発が一筋縄ではいかなかったことを考えれば、サイバー詐欺産業がもっと盛んな地域での事案にどこまで対処できるかは大いに疑問だ。

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