為替市場に「トランプ介入」不安...G20合意も、円や元を名指しする

3月4日、 トランプ米政権発足後に20カ国・地域(G20)が初めて開いた2月の財務相・中央銀行総裁会議は、為替の国際合意を巡って2021年4月の認識を再確認し、無風で終わった。 写真はトランプ氏。ホワイトハウスで3日撮影(2025年 ロイター/Leah Millis)
トランプ米政権発足後に20カ国・地域(G20)が初めて開いた2月の財務相・中央銀行総裁会議は、為替の国際合意を巡って2021年4月の認識を再確認し、無風で終わった。しかし、肝心のベッセント米財務長官は不在で、トランプ氏が3日の会見で日本円と人民元を名指ししたように、米国が関税と絡めて貿易相手国の通貨安への疑念を強める展開も予想される。
不確実要因拭えず
過度な変動や無秩序な動きは、経済や金融の安定に悪影響を及ぼす――。
先月26、27両日、南アフリカで開催されたG20では、共同声明の発出は見送られた。ただ、議長総括として従来からの為替合意は明記し、共有した。「過度な変動と競争的な切り下げを避ける内容。再確認するのは恒例行事」と、元財務省幹部の1人は語る。
とはいえ、ベッセント財務長官は「トランプ大統領との任務」を理由に不在で、市場では「トランプ政権はG20を軽視しており、合意に縛られるつもりもない。19カ国・地域での合意に意味はない」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミスト)との受け止めも目立つ。
G20に先立つ先月14日、ベッセント米財務長官はトランプ政権が相互関税の導入に向けて行う貿易相手国に関する調査について、為替操作も調べる考えを示した。「通貨政策への口出しが為替市場の大きな不確実要因。今後、数カ月は常在戦場で楽観できない」と、前出の上野氏は言う。
トランプ大統領は、これまでも人民元安や円安を念頭に、「米国にとって大惨事」とする批判を繰り広げてきた。3日の会見では、円や人民元の下落が米国に「非常に不公平な不利益をもたらす」と述べ、関税を少し引き上げて対応することになると警告した。「日本の指導者たちに、これ以上通貨を切り下げてはいけないと伝えた」とも話した。