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ロシア経済

苦境のロシア経済、トランプ大統領の早期終戦案は「渡りに船」

2025年2月25日(火)19時42分

「ロシアが軍需生産向けの支出を一夜にして止めることには消極的だろう。不況の発生を恐れているし、軍の立て直しが不可欠だからだ。ただ、兵士を一部復員させることで労働市場への圧力を多少なりとも和らげることができるだろう」と、欧州政策分析センター(CEPA)のアレクサンダー・コリアンドル氏は予想した。ロシアは徴兵や戦闘忌避の国外移住で深刻な労働力不足が発生し、失業率は過去最低の2.3%となっている。

コリアンドル氏は和平の可能性が高まれば米国が中国などの企業に対する二次制裁を強める可能性が下がり、輸入がスムーズになり、その結果物価も下がる可能性があると見ている。


 

自然な減速

ロシア市場には既に好転の兆しが現れており、21日には制裁緩和の期待からルーブル相場が対ドルで約6カ月ぶりの高値を付けた。

ロシア国内総生産(GDP)は2022年に小幅なマイナス成長となったものの、その後は力強く成長してきた。ただ当局は今年の経済成長率が昨年の4.1%増から1-2%増程度に鈍ると予測している。中銀のナビウリナ総裁は政策金利を21%に据え置いた14日の会合で、長期にわたり需要の伸びが生産能力を上回っているため、成長は自然に減速していると説明した。

経済成長を促しつつインフレを抑制するという中銀の課題は、大規模な財政刺激策によって複雑になっている。政府が2025年の財政支出を前倒したことで1月の財政赤字は1兆7000億ルーブル(192億1000万ドル)と前年比で14倍に膨らんだ。

アメとムチ

戦争は一部のロシア人に経済的な恩恵をもたらしたが、苦痛を感じている人もいる。軍事関連分野は大規模な財政刺激策で賃金が大幅に上昇する一方、民間部門の労働者は生活必需品の価格高騰に苦しんでいる。

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