最新記事
荒川河畔の「原住民」(21)

ホームレスが「かりゆし58」前川真悟さんと作った名曲「かわがないてるよ」を知っているか

2025年2月14日(金)18時00分
文・写真:趙海成

「かりゆし58」の前川真悟さんとホームレスの征一郎さん

2020年の「かわがないてるよ」リリース時、前川さん(左)は「一人でも多くの人に聴いて欲しい」と語っていた 写真: @shingomaekawa

「荒川で精神を奮い立たせてほしい」歌詞に込めた想い

私は征一郎さんに「この歌詞で一番表現したいことは何ですか」と聞いてみた。

彼はこう答えた。

「全体的に表現したいのは、さまざまな原因で悩んだり、心身ともに疲れている人が、荒川で心の洗礼を受けることです。晴れた空と川辺の美しい景観に気持ちがぱっと明るくなって、精神を奮い立たせてほしい。帰るときには悩み事や心配事が消え、旺盛な情熱を持って仕事に励み、家族に優しくし、素晴らしい人生を楽しみ続けるのです」

私の理解では、この歌詞は作者である征一郎さんの、心からの世界への祈願と期待である。

彼は、この荒川が一般的な川ではなく、戦争や天変地異、「生霊塗炭」を経験した川であることを人々に分かってもらいたいのだと思う。「生霊塗炭」とは中国の言葉で、「生きながらにして、地獄のような苦しみや困難に陥る」という意味だ。

つまり荒川は、あなたの心の中の苦悩や傷ついた痕など、訪れるすべての者を包み込む川なのだ。

自分をリラックスさせ、心を開いて、自然を抱きしめることができる。最終的にあなたを救うことができるのはあなた自身。川は、何も言わずとも、全てを教えてくれる。

聖書によると「天は自ら助くるものを助く(神は自分を救う者だけを救う)」。また仏経の教えには、「衆生は皆苦しみ、ただ自らの力で渡らなければならない」というものもある。自分の努力で困難を克服し、自分の目標を実現することは、間違いなく普遍的な真理だと思う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中