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ドナルド・トランプ

【超解説対談】第2次トランプ政権のキーワード「単一行政理論」「金ぴか時代」を読み解く

Decoding Trump 2.0

2025年2月12日(水)19時46分

――トランプ氏の理想の国家像について。

アメリカを再び偉大な国にする、Make America Great Again(MAGA)はもともとレーガン大統領のスローガンでした。レーガン大統領の「偉大なアメリカ」は、1950年代の豊かで、平和で安定したアメリカのことです。

トランプ氏もMAGAという言葉を使っているぐらいですから、当初は50年代のアメリカを意識しているのではないかと思っていたのですが、今回、一連の発言や大統領令を見ていると、それよりもっと前のアメリカ、南北戦争が終わった直後のアメリカに戻したいのではないかと。

この時代のことを「金ぴか時代」と言います。南北戦争が終わって、アメリカでは産業革命が一気に進み、元々世界最大の農業国だったのが世界最大の工業国にもなる。生産能力はどんどん上がっているのに、関税で国内産業を守ろうとする。

一方で、大企業と政府の癒着がどんどんと進んでいく時代でもありました。帝国主義の時代にも入り、米西戦争を機にキューバを保護国にし、ハワイを領有し、アラスカもそのとき手に入れた。領土拡張の野望が出た時期だが、今回の一連の大統領令(が目指すアメリカ)は「金ぴか時代」のアメリカに非常に似ている。

大企業は当時は鉄鋼や鉄道だったが、今回はビッグテックに変わった。選挙で選ばれていないビックテック系のCEOたちが政治に口を出す。「新しい金ぴか時代」と言ってもいいかもしれません。

――就任式で居並ぶビッグテックのCEOたちの様子を見ると、まさにそうだ。

もう一つ危険なのが、ウクライナを征服するべきだと言ったオリガルヒと同じ、ということです。新しい新興財閥の彼らは選挙で選ばれてもいないのに、お金という力を使って政治に口を出す。まさにアメリカのビッグテック系もオリガルヒになりつつある。

――トランプ氏自身に、自らの理想が南北戦争後のアメリカだという意識はあるのか。

これはわかりません。無意識かもしれない。本人はレーガン大統領と同じく50年代の、トランプ氏が知っているアメリカに戻したいと思っているのかもしれません。でも彼がやろうとしているのはニューディールの前、大きな政府・福祉国家になる前の「金ぴか時代」のアメリカに戻すことじゃないか、という気がします。

――閣僚人事について。驚くような人たちがどんどん閣僚になろうとしている。

一言で言うと忠誠心。これが全ての選考基準になっています。トランプ氏がやろうとすることを実現するのはもちろん、バイデン政権の間にトランプ氏は4つの裁判を起こされていますが、司法省に対する復讐のための人事も見られます。

もう一つはウォールストリート系の投資家たちを入れて、自分が進めようとしている経済政策をやらせる。そこに陰謀論者と思われる人たちも入ってこようとしているが、全て結びつけるのは忠誠心。いくつかのグループはあるが、トランプ氏の政策を実現するための閣僚ですから、トランプ氏に反対するような人は一切入っていない。

――第1次政権は四つ星の将軍やビジネスで成功したCEOが要所要所の閣僚ポストを担っていたが、彼らが常識を働かせてトランプ氏に反対するようになった結果、うまくいかなくなった。その反省を活かしている?

1期目はトランプ氏も自分が勝てると思ってなかったんです。だから人事の準備などもしていなかった。伝統的な共和党の人たちから閣僚を選んだ結果、やろうとすることに反対する人たちが出てきた。今回はもう入念に人事も含めて準備をし、その中で忠誠心を重視して進めてきた。

――能力よりも忠誠心?

能力よりも忠誠心です。

――忠誠心だけでアメリカ政府は回っていくのだろうか。

おそらく回らないと思います。やはり大統領の周りに異なる意見を持つ人たちがいて、初めてその政策はいい方向に行く。トランプ氏がやると言ったことをみんなでやるだけの閣僚たちになるので、非常に難しいと思います。

――各省庁の監察官をなくす、廃止するという動きも出ています。歯止めが利かなくなるのでは。

「金ぴか時代」と同じく、不正がまかり通る政治になっていく可能性は十分あると思います。

*後編に続く(2月19日公開予定)

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