最新記事
人道支援

アメリカの対外援助削減で、世界中の人道支援が危機に

2025年1月29日(水)09時16分
USAID

トランプ米大統領の対外援助の大幅削減に向けた動きにより、タイの難民キャンプの野戦病院、紛争地帯での地雷除去、エイズウイルス(HIV)などの病気に苦しむ数百万人を治療するための医薬品などが削減の危機に直面している。写真は、米国国際開発庁から提供された新機材を手にするウクライナの救助隊員ら。2023年7月、キーウで撮影(2025年 ロイター/Alina Smutko)

トランプ米大統領の対外援助の大幅削減に向けた動きにより、タイの難民キャンプの野戦病院、紛争地帯での地雷除去、エイズウイルス(HIV)などの病気に苦しむ数百万人を治療するための医薬品などが削減の危機に直面している。

トランプ氏は先週、自身の「米国第一」主義との整合性を評価するために米国国際開発庁(USAID)を通じた対外開発援助を90日間停止する大統領令に署名した。


 

人道支援団体や国連機関によると、もし資金拠出の凍結が恒久的になれば、食料や避難所、医療の提供能力が大幅に制約される恐れがある。

米国は世界の人道援助に対する最大の貢献国となっている。2024年には139億ドルを供給したと推計されており、これは国連がフォローしている援助全体の42%を占める。

ミャンマーからの難民約10万人が避難しているタイのキャンプの診療所は、米国が国際救済委員会(IRC)への資金提供を凍結後に停止を命じられた。

また、ロイターが確認したメモによると、米国の対外援助の削減は数百万人が依存している世界中のHIVやマラリア、結核の救命薬の供給にも影響を及ぼす。

USAIDから請け負っている業者やパートナーは28日、直ちに任務を止めるように命じたメモを受け取り始めた。

「これは壊滅的だ」とUSAID長官補を今月退任したアトゥール・ガワンデ氏は訴える。「寄付された医薬品によって2000万人のHIV感染者が生存している。それが今日で止まってしまうのだ」。さらに、米国の対外援助削減は23カ国の計650万人のHIV感染孤児と脆弱な子どものために活動している団体に打撃を与えると指摘した。

世界食糧計画(WFP)のアフガニスタン担当ディレクター、シャオウェイ・リー氏はロイターに対し、WFPがアフガニスタンへの援助に必要となる資金の既に約半分しか受け取っておらず、600万人超が「パンとお茶だけで」生き延びていることを考えると先行きを懸念していると語った。

国連によると、米国は2024年にWFPに対して47億ドルを拠出しており、全体の54%を占める。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米

ビジネス

独IFO業況指数、4月86.9へ予想外の上昇 貿易

ワールド

カシミール襲撃犯「地の果てまで追う」とモディ首相、

ビジネス

ロシュ、米政府と直接交渉 関税免除求める
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 10
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中