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トランプ2.0

パナマ運河やグリーンランドを取り戻すというトランプの姿勢は、かつてアメリカが自明と見なしていた西半球重視の復活にすぎない

HEMISPHERIC DEFENSE

2025年1月23日(木)15時00分
アレクサンダー・グレイ(第1次トランプ政権の大統領次席補佐官)

1823年、当時のジェームズ・モンロー大統領は、西半球はヨーロッパの干渉から解放されるべきだと宣言(モンロー主義)。初期のアメリカの外交政策は、広大な西半球で自国の利益を確保することに重点を置いていた。

エイブラハム・リンカーンとアンドリュー・ジョンソン両大統領の下で国務長官を務めたウィリアム・スワードはアラスカの購入に成功し、グリーンランドの購入も提案した。アメリカはパナマ運河建設に向けて長年にわたって取り組み、プエルトリコとキューバを占領し、バージン諸島を購入した。アメリカの外交政策は長年、隣接する地域を守ることは当然という考えに基づいていた。


第2次大戦中にもアメリカは、当時のネルソン・ロックフェラー国務次官補(中南米担当)が主導した「半球防衛政策」に従い、西半球での利益を守ることに尽力。グリーンランドを占領し、ブラジルとメキシコを連合国側に引き入れ、カリブ諸国にある英海軍基地の管理権を掌握するなどした。

だがアメリカの西半球重視の伝統は、数十年前から民主・共和両党の大統領によって放棄されてきた。まず1977年、当時のジミー・カーター大統領がパナマ運河の領有権をパナマに返還することを決める。

アメリカはこれ以降、西半球を過去の政策の失敗という観点から捉えるようになる。かつて戦略的・工学的な偉業とされていたパナマ運河建設は、アメリカの帝国主義を示す例として批判され始めた。冷戦時代にグアテマラやチリのクーデターに関与したり、軍事力を誇示して交渉を有利に進めようとした20世紀初めの「砲艦外交」も過去の汚点とされた。

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