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「信頼失墜」のメディア...トランプ再登場で試される「報道戦略」

Mainstream Media, Bruised and Battered, Prepares for Trump 2.0

2025年1月17日(金)15時50分
ヘスス・メサ

この選択は、主流メディアに対して、より洗練された報道姿勢を求めるものとなった。トランプ氏の発言にいちいち憤慨して反応する旧来の手法は、信頼が揺らぐ現在ではもはや通用しないかもしれない。最新のギャラップ調査によると、主流メディアはアメリカで最も信頼されていない機関となっており、議会よりも下位に位置している。

この信頼の低下は一夜にして起こったわけではない。SNSやTikTokのような代替プラットフォームの台頭により、従来のメディア環境は分断され、視聴者は次第にニッチな情報発信者に流れている。長尺のポッドキャストや独立系クリエイターが影響力を増し、伝統的なメディアから視聴者を奪っている。ジョー・ローガンのポッドキャストは、主要3ネットワークのニュース放送すべてを合わせたよりも多くのリスナーを持つ。

メディア分析家のブラッド・アドゲイト氏は本誌に対し、「トランプ氏はこの変化を誰よりも理解していた」と語る。

「これらの形式は、対立なしに何時間もの無編集の発言を許す。事実が埋もれ、責任追及が消える懸念があるが、結果は明らかだ」

伝統的なメディアの課題は、ポッドキャスターやインフルエンサーとの競争だけにとどまらない。アメリカの報道界の重鎮たちも苦境に立たされている。ジェフ・ベゾス氏が所有するワシントン・ポストでは、ベゾス氏がカマラ・ハリス氏への推薦を編集委員会に禁じたことで内部対立が起きた。この決定によりリベラル層の購読解約が相次ぎ、著名な左派コラムニストのジェニファー・ルービン氏らが辞任。トランプ政権時代に活躍した有名記者たちも相次いで退社した。ポストのデジタル閲覧数も急落し、2021年の1日あたり2250万人から2024年には約300万人にまで落ち込んだ(Semaforが入手した内部データによる)。

一方で、アメリカの情報消費を変えるテック大手も「言論の自由絶対主義」という新たな理念を打ち出している。イーロン・マスク氏が率いるX(旧Twitter)は保守派の声を増幅し、マーク・ザッカーバーグ氏のMetaは先週、突然ファクトチェックプログラムやDEI(多様性・公平性・包括性)施策の廃止を発表した。その意図は明白で、ザッカーバーグ氏は続けてジョー・ローガンの番組で3時間にわたり、バイデン政権への不満を語った。

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