最新記事
韓国

新たな分断に直面する韓国 戒厳令から1カ月、大統領官邸前で対峙する二つの民意

2025年1月10日(金)19時20分
佐々木和義

着座用発泡スチロールやマットを持参する集会参加者たち

着座用発泡スチロールやマットを持参する集会参加者たち(筆者撮影)

8年前との違いはほかにもある。8年前はろうそくの在庫が不足して、増産や追加輸入する事態に陥った。今回はろうそくに代わってペンライトが使われることが多く、なかには交通誘導灯やK-POPアイドルのペンライトを持ち込む人たちもいる。

また8年前は会場で着座用マットなどを販売する光景が見られたが、今回は多くの参加者が発泡スチロールやキャンプ用シートなど持参している。またスペースの関係からか屋台は8年前の3分の1ほどで、温かい飲み物や菓子などをデリバリーで注文する集会参加者もいるという。

地方からの参加者は大きく異なる。8年前は大型バスを手配して早朝に各地を出発、午前中に景福宮などソウルの名所を観光してから集会に参加するツアーで交通渋滞が起きるほどだった。今回も農業用トラクターでソウルに向かった農家と警察が対峙する場面が見られたが、全国各地で集会が行われているからか集会参加ツアーは見られない。

尹錫悦は支持できないが、李在明は嫌い!

世論調査会社韓国ギャラップによる12月末時点の尹大統領の支持率は13パーセントで不支持率は80パーセント、与党・国民の力の支持率25パーセントで、最大野党・共に民主党の支持率は42%だった。だが、韓国人の33パーセントが尹大統領の続投を求めているという調査もある。

尹大統領を支持しないながらも続投を求める理由は次期大統領候補にあるとみられる。尹大統領が辞任した場合、次期大統領は最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が最有力だ。李代表は12月31日、2日前に航空機事故が起きた務安空港を訪れたが、ある遺族から「宣伝のために来たのか」と糾弾されるひと幕があった。共に民主党の支援を大統領選を踏まえた偽善行為と見做したのだ。

実際、筆者が知る韓国人は、「尹錫悦は支持できないが、それ以上に李在明(の大統領就任)は嫌だ」と話す。尹大統領派集会には反李在明派が相当数加わっているようだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中