古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
Mysteries of a Cup
膣からの分泌物の痕跡も
検査した古代のマグカップからは、フルーツ由来の発酵アルコール分を含む液体や、偶然の混入ではなく意図的な添加と思われる人間の体液の痕跡も確認された。
「血液や膣からの分泌物、それに母乳の可能性があるタンパク質も確認された。これらの液体には何らかの象徴的な意味、あるいは儀礼的な意味があったと考えられ、生命や生殖、再生といったテーマに関連していた可能性がある」とグレコは述べた。
ちなみに、香料にはハチミツやゴマ、松の実、リコリスやブドウなどが含まれており、古代エジプトの神話、おそらくは生殖に関わる神話を何らかの形で儀礼的に再現する目的で加えられた可能性が高いという。
「今回の研究で、ベス神のマグカップに単なる装飾物や実用品以上の意味があることが分かった。こうした容器は複雑な儀式で使われ、極めて重要な役割を果たしていた」とグレコは考える。「その内容物から推定すると、この容器は意識の変容や生殖、予言に関わる儀式で用いられ、向精神性の飲料を作ったり飲んだりするために使われていたと考えられる」
古代エジプトで行われていた儀式の実態が明らかになっただけではない、とグレコは言う。あのベス神が「神秘的変容を具現化」する神であることも分かったのだ。

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