イランの弱体化でトランプは中東安定化の好機を生かせるか

MIDDLE EAST

2024年12月26日(木)13時10分
デニス・ロス(ワシントン中近東政策研究所)

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ハメネイの思惑は? MORTEZA NIKOUBAZLーNURPHOTOーREUTERS

組織としてのハマスはまだ存在しているが、軍事力はもうない。まだ数千人が武器を持ち、2~3人の小集団が局地的な抵抗を見せる可能性はあるが、軍事力と軍事的インフラ(武器庫、研究所、生産施設)の大半は消滅した。地下トンネルの半分以上は破壊され、ガザの住民感情は反ハマスに傾いた。最近のある世論調査によれば、ハマスのガザ支配が続くことを望む声はわずか7%だ。

さらにガザにおけるイスラム法学の最高権威サルマン・アッダヤは、この壊滅的な戦争を引き起こしたハマスを批判するファトワ(宗教令)を出している。大量の死と破壊をもたらす可能性が高いことを知りながらテロ攻撃を実行したハマスは、「聖戦に関するイスラムの原則に違反した」と、アッダヤは指摘した。


ハマスに対する人々の怒りとアッダヤのファトワは、ガザ住民が戦争終結を望み、アラブ諸国も参加する国際的連合が監督する暫定統治を歓迎する可能性が高いことを示している。アラブ首長国連邦(UAE)は既に、ガザの行政と復興の監督、法と秩序の確保、密輸防止、そして抜本的な改革を実行したパレスチナ自治政府の下での「パレスチナ人による統治」に向けた暫定的取り決めへの参加を表明している。

ハマスの軍事力が破壊され、再建が不可能になりつつある今、ガザにおけるハマス支配に代わる選択肢が25年中に現実のものとなる可能性はある。そして弱体化したのはハマスだけではない。

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