最新記事
中東

イランの弱体化でトランプは中東安定化の好機を生かせるか

MIDDLE EAST

2024年12月26日(木)13時10分
デニス・ロス(ワシントン中近東政策研究所)
イスラエルの空爆を受けたガザ中部の難民キャンプ

イスラエル軍は2024年6月、ガザ中部の難民キャンプを空爆。大勢の子供を含む民間人が犠牲になった MAJDI FATHIーNURPHOTOーREUTERS

<イランと「抵抗の枢軸」が弱体化し、第2期トランプ政権が登場することで、新たな秩序が生まれる可能性も出てきた>

パレスチナ自治区ガザとレバノンでの紛争、イスラエルとイランの直接的な武力の応酬を考えると、2025年の中東に明るい展望を思い描くのは難しいように思える。ドナルド・トランプのホワイトハウス復帰で不確実性は増すばかりだと、多くの観測筋は言う。だが私は、新しい前向きな連携が生まれる可能性を考えている。

パレスチナ人がガザで経験した壊滅的な損失や、ベイルート南部を含むレバノンの一部における破壊を否定したり無視したりするつもりはない。あるいはパレスチナのイスラム組織ハマスの奇襲テロ攻撃を受けた2023年10月7日のような弱みは二度と見せないというイスラエル(右派以外も含む)の決意をないがしろにするものでもない。


平和の創造に取り組むべき人々は今や信頼を失っている。それも当然だ。しかし、平和創造はおそらく2025年の目標としては現実的ではない。むしろ現在進行中の紛争の終結と、安定と安全保障のための基盤構築に焦点を絞るべきだ。

ハマスによる10月7日のテロ攻撃と、その翌日にレバノン南部のイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル北部に向けて発射した大量のロケット弾はイスラエルによる軍事行動の引き金となり、大きな損害を出したが、同時にハマスとヒズボラを一気に弱体化させた。両組織の最高指導者ヤヒヤ・シンワールとハッサン・ナスララ、そして幹部の大半が今はこの世にいない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、3月51.6に上昇 財政政策

ワールド

イスラエルがガザ大規模攻撃、死者400人超 ハマス

ワールド

フーシ派幹部「米とは戦争状態」、イランは緊張緩和働

ビジネス

インド当局、価格談合疑いで電通などの事務所を家宅捜
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 2
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料高騰問題」の深層
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「トランプ錯乱症候群」(TDS)って何? 精神疾患に…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「二酸化炭素(CO₂)排出量…
  • 6
    鈍器で殺され、バラバラに解体され、一部を食べられ…
  • 7
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 8
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 6
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中