最新記事
民主主義

「トランプは法律を破ることに罪の意識を感じない」再登板で試される民主主義

U.S. POLITICS

2024年12月26日(木)16時09分
アーウィン・チェメリンスキー(米カリフォルニア大学バークレー校法科大学院学長)

トランプは女性コラムニストへの性的暴行を裁判で認定された後も彼女を中傷し、名誉毀損で賠償金の支払いを命じられた。

さらに、不倫関係にあった元ポルノ女優に口止め料を支払い、それを隠すために業務記録を改ざんしたとして、34件の重罪容疑で有罪評決を受けた。


トランプの一族企業は、不正な商慣行で利益を得たとして罰金4億5400万ドルの支払いを命じられている。

一方、保留中の訴訟もある。トランプは20年の大統領選で敗れた際にジョージア州の州務長官らに圧力をかけ、結果を覆すために必要な約1万2000票を「見つける」ように迫ったとして起訴されている。

大統領退任後に機密文書を私邸に持ち込み、その行為を隠蔽しようとした容疑と、20年の選挙結果を覆そうとした容疑でも連邦刑事訴訟が行われていたが、トランプの再選を受けて検察側が起訴の取り下げを要請。

裁判所に認められ、訴訟は終結した。

これら全てが明白に示していることがある。

トランプは法律を破ることに罪の意識を感じないのだ。だからこそ、抑制策は喫緊の課題だ。民主主義は永遠に続くわけではない。かつての民主主義国家が、そうではなくなった例はたくさんある。

トランプの再登板でアメリカは権威主義へと向かうのか、それとも保守政権に戻るだけか。今後数年間で何よりも差し迫った問題だ。

©Project Syndicate


newsweekjp20241225033951-615e14301fa8563332f0851b4a4aab1f114d0089.jpgアーウィン・チェメリンスキー
ERWIN CHEMERINSKY
「ワシントンの責任と倫理のための市民(CREW)」の法律チームの1人、17年1月の大統領就任式の3日後にトランプを提訴

ニューズウィーク日本版 トランプショック
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    ロシア軍が従来にない大規模攻撃を実施も、「精密爆…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中