フランス政変の行方――盟友バイルー新首相が導くマクロン政権の終焉の始まり
バイルー新首相は、マクロン支持の与党中道連合を中核にして、左派の穏健派から右派の穏健派までを含めた、幅広い与党連合の連立政権を目指すと見られている。
しかし、政治的に鋭く対立する左派と右派を含めた組閣には困難が予想され、仮になんとか連立政権が成立したとしても、実際の政権運営や政策調整は、連立各党の妥協に頼るしかなく、政策面でも連立各党が最低限合意できる範囲でしか決定・実行できないのは目に見えている。
このようにそもそも政治的主導権を奪われているマクロン=バイルー政権は、当初からレームダック状態でスタートすると言わざるを得ない。
大統領としての指導力を喪失、しぶしぶ任命
しかも、マクロン大統領は、先の議会解散と総選挙における敗北以来、すっかり大統領としての指導力を喪失しており、今回のバルニエ首相の後任選びにおいても、自らが望んだ股肱の臣を選任することができず、中道連合の重鎮、バイルー党首に押し切られる形で、同党首自身を新首相に任命せざるを得なかった。
バイルー党首は、マクロン大統領が初めて選出された2017年の大統領選挙において、自らの立候補を取り下げ、マクロン支持に回って、中道派をマクロン支持で一本化し、マクロン当選に大きく貢献した。
その時以来、マクロン政権下で常に自他ともに認める首相候補と見做されてきたが、マクロン大統領の選ぶところとはならず、法務大臣などの処遇ポストに甘んじてきた経緯がある。
今回の首相選びにおいても、政界やメディアでは早くから本命と目されていたが、マクロン大統領は最後まで、バイルー党首以外の選択肢を模索し続けた。
新首相決定の最終段階でも、マクロン大統領はバイルー党首に対し直接、改めて、同党首を首相に選任するつもりはないと伝え、失望した同党首が、それではこれまでの盟友関係をご破算にするとまで述べて、翻意を迫ったことでようやく、マクロン大統領も折れて、同党首を首相に選任することになったと報じられている。
結局、しぶしぶ任命した形になっているが、マクロンが最後までバイルーを忌避し続けたのは、なぜか。
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