「通商交渉の責任者は自分」トランプの陣頭指揮で米通商政策はカオスに
次はどの国がトランプの関税政策の標的になるのかという不透明感も高まっている。ヨーロッパ諸国が防衛支出を増やさなければ、あるいは日本や韓国の企業が中国産の原材料を使い続ければ、狙い撃ちにされるのだろうか。
トランプは1期目の終盤、2019年半ばにも似たようなアイデアをちらつかせたことがある。メキシコからの全ての輸入品に5%の関税を課し、メキシコがアメリカへの不法移民流入を減らさなければ、税率を段階的に25%まで引き上げると表明したのだ。このときは、メキシコ政府が国境管理の強化を約束し、危機は回避された。
2期目の政権では、1期目に手腕を振るったライトハイザーが去り、関税政策のエキスパートの存在感は薄くなる。USTR代表に指名されたのは、40代のジェミソン・グリア。通商法を専門とする弁護士で、元米空軍の軍人。1期目の政権でライトハイザーの首席補佐官を務めたが、政府で働いた経験はそれだけしかない。
その点、通商・製造業担当の大統領上級顧問を務めるピーター・ナバロは、1期目で通商政策担当の補佐官を務めた経験の持ち主。強硬な保護貿易主義者であり、2021年1月の連邦議会襲撃事件に関して議会証言を拒否し、4カ月間収監された人物である。
一方、ホワイトハウスの国家経済会議委員長に指名されたのは、経済学者のケビン・ハセット。ナバロとは対照的に、伝統的な共和党の考え方に近い自由貿易主義者だ。
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