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韓国12.3戒厳令が教える直接選挙による大統領制の負の側面

2024年12月11日(水)20時00分
佐々木和義

韓国大統領が3人続けて対象となったろうそく集会の歴史は1987年に遡る。1987年6月10日、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権に民主化を求める市民らがろうそくを手にデモを行った。2004年3月には盧武鉉大統領の弾劾に反対するろうそく集会が行われ、2008年の5月から3カ月にわたって米国産牛肉の輸入に反対するろうそく集会が行われるなど、80年代半ばまでの火炎瓶と投石に代わるデモ形態として定着した。

最も大規模なろうそく集会は朴槿恵大統領への退陣要求デモだ。

2016年10月、朴槿恵大統領の友人だった崔順実(チェ・スンシル)の国政介入の発覚から朴大統領が罷免となる翌年3月まで毎週末、ソウル市中心部にある光化門広場を中心に大規模なろうそく集会が繰り広げられた。続く文在寅(ムン・ジェイン)大統領も対象となったが、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐ名目で集会を禁止。ろうそく集会による退陣要求を免れた。

直接選挙による大統領制、負の側面とは

今、尹大統領がろうそく集会の矢面に立たされているが、直接選挙で選ばれる韓国大統領制の負の側面は見逃せない。

韓国大統領制の対極といえるのが日本の議員内閣制だ。日本の首班は国会が選出する。国民の意にそぐわない首班が指名されることもあるが、多くの場合、経験や実績で選ばれる。直近30年で閣僚経験をもたない首相は村山富市のみであり、閣僚経験が希薄な首相も鳩山由紀夫のみである。さらに間接選挙で選ばれる首班の権限は限られるうえ、国民の意に反する政策を行うと国会が内閣不信を決議するなど任期途中で辞職する。

一方、韓国の大統領は国民の直接選挙で選ばれる。5年間の任期中、強大な権限を有し、途中解任も基本的にない。1988年の民主化以降、任期を全うしていない大統領は朴槿恵が唯一だ。
直接選挙で選ばれる大統領は経験や実績に関わらず人気投票となりがちだ。盧武鉉は国会議員を6年間勤めた後、海洋水産部長官を経て大統領に就任した。閣僚経験は7カ月のみだ。李明博は国会議員6年とソウル市長1期4年で閣僚経験はない。朴槿恵も国会議員を14年勤めたが閣僚経験はなく、文在寅は国会議員1期のみで閣僚経験は皆無である。尹錫悦にいたっては大統領選出馬まで24年間検察一筋で、閣僚どころか政治経験すらない。

文在寅前大統領は朴槿恵大統領の退陣を求めるろうそく集会で人気を集めて大統領となり、尹錫悦も朴槿恵の不正を追求する特別検察のリーダーとして文在寅の信頼を得たものの、側近だった曺国(チョ・グク)の疑惑を追求。政権に迎合しない姿勢から人気を得て大統領に就任した。

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