米連邦準備理事会(FRB)、パウエル議長主導で「伝統的」金融政策に回帰か
枠組み修正へコンセンサス
FRBは今、インフレ圧力がパンデミック以前よりも高止まりしたままで、金利水準はゼロを大きく上回っているので、非伝統的政策を解禁した17年前の「大不況」時代より昔のように、金利の上げ下げで目標達成ができると考えている。
実際に大きなショックが起きれば、そのような伝統的な金融政策の見せ場が戻ってくるかもしれない。
例えば一部のエコノミストは、トランプ次期政権の下で輸入関税による物価上昇と減税を通じた消費拡大、移民制限による労働供給不足が同時に発生すれば、FRBが現在健全で均衡していると見なす経済に波乱が生じてもおかしくない。
しかし、FRBの現行の政策運営の枠組みは07―09年の後の失われた10年と、パンデミック期のそれぞれの環境とリスクへの対応に特化し過ぎており、インフレにはもっと慎重な姿勢に戻るべきだというコンセンサスも形成されつつある。
FRBの調査部門も、こうした慎重な姿勢が雇用市場にも良い影響をもたらし、インフレが根付く前に抑え込むという旧来の哲学を復活させるのが望ましいとの意見が勢いを増していると示唆する。
エコノミストのクリスティナ・ローマー氏とデービッド・ローマー氏は9月のブルッキングス研究所の会議に向けた論文で「予防的な金融政策の行動は適切であるばかりか、必要不可欠だ」と記し、金融政策は的を絞る性質でないため貧困減少や格差是正はできない以上、意図的に過熱した労働市場を追求してはならないと訴えた。
パウエル氏も政策の枠組み修正を想定しているもようで、米国はFRBの過剰な支援を必要とする局面を脱したとの見解を示していることからも、修正は歓迎される方向になりそうだ。
パンデミック期にはFRBの権限を押し広げてきたパウエル氏だが、後継者には力を注ぐ対象をより限定した組織として委ねることになるかもしれない。
パウエル氏は今年11月の米南部テキサス州ダラスでの講演で「われわれが現行の枠組みを導入してから1年と4カ月後に、20年にわたる低インフレが幕を閉じた」と語り、より「伝統的な」中銀のスタイルに戻ることに言及した。


アマゾンに飛びます
2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら