最新記事
FRB

米連邦準備理事会(FRB)、パウエル議長主導で「伝統的」金融政策に回帰か

2024年12月4日(水)14時38分

ウォラー氏はパウエル氏とともにインフレとの戦いを主導し、気候変動など金融政策の影響が直接及ばない分野とFRBが距離を置く姿勢を保ってきた。

また、ウォラー氏は20年にFRBが採用した現在の政策運営の枠組みが足元の経済状況とそぐわなくなっているとの理由で改革を強く提唱すると目されている。


 

20年に起きた新型コロナのパンデミックは幅広いセクターで失業をもたらし、07―09年の金融危機後のような雇用回復の遅れを再発させないと決意したFRBにとって、労働市場の支援が最優先課題になった。こうした雇用回復の遅れは多くの人が「失われた10年」との感覚を持ち、一世代分の労働者に傷跡を残した。慢性的に弱い物価上昇率や歴史的な低金利は、スタグフレーション懸念も引き起こした。

20年の枠組みは、金利が低水準にとどまり、過去に比べてゼロ近辺で推移する期間が長いという前提に立ち、「広範囲かつ包摂的な」雇用創出という新たなコミットメントを加えて諸問題の解決に当たろうとするものだった。

ゼロ金利制約は中銀の存在意義を脅かす悩みの種だ。金利がゼロになれば、さらなる経済支援のために残される金融政策手段は筋が悪いか、政治的に難しい選択肢だけになる。金利はマイナス圏まで引き下げられるものの、これは実質的な預金者への課税となる。そのほかに考えられるのは大規模な債券買い入れによる長期金利抑制、ないしは低金利の長期継続というコミットメントなど。

20年の枠組みでは、物価が低迷した期間を埋め合わせて平均的に2%の物価上昇目標を達成するため、FRBはしばらくの期間物価が目標から上振れるのを容認することで事態を解決しようとした。

ところが、その後にさまざまな理由で進んだのが過去40年で最悪のインフレで、FRBは22年と23年に大幅な利上げを強いられた。一方、このような動きは休眠状態にあった経済を活性化し、財政など金融政策以外の経済政策を主役の座に据える結果になった面がある。

トレードステーションの市場戦略グローバル責任者、デービッド・ラッセル氏は「経済と株式市場は超低金利をももはや必要としていない。これからは貿易と税制が恐らく、金融政策より大事になるだろう」と語った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中