最新記事
FRB

米連邦準備理事会(FRB)、パウエル議長主導で「伝統的」金融政策に回帰か

2024年12月4日(水)14時38分
米連邦準備理事会(FRB)

12月2日、米連邦準備理事会(FRB)は過去17年の大半の期間で、米国の経済政策の中心に位置してきた。テキサス州ダラスで11月14日撮影(2024年 ロイター/Ann Saphir)

米連邦準備理事会(FRB)は過去17年の大半の期間で、米国の経済政策の中心に位置してきた。金融システムに数兆ドル規模の安全網を張り巡らせるとともに、10年近くにわたって超緩和的な金融政策運営を続け、新型コロナウイルスのパンデミックが起きるとすぐに対応し、株式市場や気候変動といった領域にも足を踏み入れている。

しかし、FRBのそうした拡張的な役割は今、ごく簡潔な声明文や金利を巡る基本的な議論、保有債券の削減という形で収縮方向にある。パウエル議長は、パンデミックが引き起こした経済危機を米国が乗り切る力を与えたのと同時に、中央銀行を再び退屈な存在に戻した人物として記憶されるかもしれない。


 

セントルイス地区連銀総裁を務めたジェームズ・ブラード氏は2007―09年の金融危機を通じてFRBが役割を広げていった時期の連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーで、パンデミック時にまたFRBが膨張した後、より通常の組織に復帰しつつある様子を目の当たりにしている。

現在パデュー大ミッチ・ダニエルズ経営大学院の学長となったブラード氏は2日、FRBの金融政策の枠組みや物価安定と雇用最大化という使命達成に向けた戦略に関する会議で基調講演。近年のFRBについて「まだゼロ金利制約やバランスシート政策について心配の必要がなかった古い時代を思い起こさせるような、インフレとの戦いという重大な仕事に回帰しなければならなくなった。金融政策という面では最もシンプルで、時代は変わった」と説明した。

11月5日の大統領選でトランプ前大統領が勝利したことにより、FRBを巡るさまざまな議論が起こる可能性は避けられない。例えばトランプ氏は1期目に試みたようなパウエル氏の解任や権限縮小の取り組みを復活させるかもしれない。

しかし、アメリカン・インスティテュート・フォー・エコノミック・リサーチが主催するこの会議では、もう一つの可能性も強調されている。インフレが抑制され、経済は成長を続け、金利が長期的なレンジに収まる中で、FRBが表舞台から退き、次期政権の安定にとって重要になっているインフレ対応に専念するという展開だ。

雇用支援からインフレ対応へ

会議の基調講演を務めるのはFRBのウォラー理事。トランプ氏の1期目にボウマン理事とともに任命され、パウエル氏が26年5月に予定通り議長を退任した場合の、FRB内部の後継候補の1人になる。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

相互関税は即時発効、トランプ氏が2日発表後=ホワイ

ワールド

バンス氏、「融和」示すイタリア訪問を計画 2月下旬

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ問題など協議

ワールド

米、中国軍事演習を批判 台湾海峡の一方的な現状変更
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中