最新記事
不法移民

メキシコとの国境地帯の砂漠で「20年間で4000人以上の移民が死亡」実際の死者は3〜8倍との指摘も

DEAD AND BURIED

2024年11月6日(水)19時02分
ダン・グッディング、ビラル・ラーマン(共に本誌記者)
メキシコとの国境地帯の砂漠で「20年間で4000人以上の移民が死亡」実際の死者は統計の3〜8倍との指摘も

移民と思われる遺体が荒野で発見されることは少なくない JAMES HOLEMAN/BATTALION SEARCH AND RESCUE

<メキシコからアメリカへ、違法な場所で国境を越える移民は後を絶たない。そして、無数の人々が国境地帯で命を落とす。その全容はまだ明らかになっていない>

近年、メキシコとアメリカの国境地帯でおびただしい数の移民が命を落としている。ボランティアの捜索隊により砂漠で発見される白骨が、アメリカに渡ろうとして断ち切られた命の存在を伝える唯一の証拠であることも少なくない。

人権団体はかねてこうした状況を「収束する気配のない危機」と呼び、国連は昨年9月、過去1年間で少なくとも686件の移民の死亡と失踪が報告されたと発表した。死亡・失踪事件の半数近くは国境にまたがるソノラ砂漠とチワワ砂漠で起きている。ただし、実際の数は統計よりもはるかに多いと考えられている。


ボランティアは砂漠で行方不明者の捜索に当たり、遺体が発見されれば報告し、身元の分からない遺体の衣服や所持品をカメラに収める。

「ここアメリカの国土、公有地で人の亡きがらを見つけるたびに強い怒りを覚える」。そう語るアビー・カーペンターは、移民の捜索救助活動を行うNPO「バタリオン・サーチ・アンド・レスキュー」のボランティアだ。

「またか、と憤りを感じる。また遺体が見つかった、この人の場合も名前が判明することはなく、その身に何が起きたのかを遺族が知る日は永遠に来ないのだろう、と」

1年前からカーペンターは、国境を越えた後、ニューメキシコ州とアリゾナ州で消息を絶った移民の捜索に関わっている。これまでに加わった12回の捜索活動で、およそ35人分の遺骨を発見。死亡時の年齢は10〜67歳だった。

税制
日本のモデルは「合理的」。安定財源として期待される「たばこ税」はどうあるべきか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ルーマニア大統領選、親ロ極右候補躍進でT

ビジネス

戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投

ビジネス

JAM、25年春闘で過去最大のベア要求へ 月額1万

ワールド

ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 5
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 7
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 10
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中