どちらが勝っても日本に「逆風」か...トランプvsハリス、日本経済にとって「まだマシ」なのは?

SHIFTING AMERICAN WINDS

2024年11月1日(金)14時29分
加谷珪一(経済評論家)

USスチールの向上

日本製鉄によるUSスチール買収は共和・民主双方のリーダーから阻まれる事態に JUSTIN MERRIMANーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

目玉政策を実施すればインフレが加速することになり、インフレを退治するためには利上げが必須だが、トランプ氏は利上げを否定している。そうなるとさらにインフレが加速し、トランプ氏の主張とは正反対に物価高が止まらなくなる可能性が高い。

一部の論者はトランプ氏がアメリカ国内での石油・天然ガスの採掘を強力に推進すると主張していることから、エネルギー価格の下落を通じてインフレを抑制できると主張している。


確かに石油や天然ガスの供給増はインフレ抑制効果をもたらすかもしれないが、アメリカのシェールガス、シェールオイルの採掘コストは高く、現在の原油価格水準では、各社が生産量を大幅に拡大するインセンティブは働きにくい。

従ってエネルギー供給の増大だけで現在のインフレを克服するのは困難と考えたほうがよい。日本国内では、アメリカの原油増産によってエネルギー価格が下がることを望む声も出ているが、過度な期待は禁物といえよう。

トランプ氏が大統領に就任した場合、程度の問題はともかくとして、関税と移民政策については実行に移す可能性が高く、インフレを防ぐためFRBは金利を上げるというシナリオが濃厚である。

トランプ氏は激しくFRBを批判するだろうが、アメリカの中央銀行制度は独立性が高く、大統領の意向であっても簡単には受け入れない。FRBが再び利上げに転じれば、円安が再度、進むことは十分に考えらえる。

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