最新記事
米大統領選

米副大統領候補対決はハリス陣営の負け。ウォルズが頭のキレなさと議論経験の不足を露呈

Walz the Ultimate Winner?

2024年10月7日(月)20時05分
ジム・ニューウェル(スレート誌記者)

それなのにバンスはトランプがオバマケアを「救った」と言い張ったのだ。「オバマケアが複雑な手続きと医療コストの重みでつぶれそうになったとき、ドナルド・トランプはそのままつぶすこともできたのに、超党派の合意を取り付け、アメリカ人が法外な金を払わずとも医療を受けられるようにした」と。

耳を疑うような珍説だ。


ウォルズはいくつか事実を整理したが、怒りを見せて反論することはしなかった。そして、バンスはウォルズに「個人に(保険加入を)義務付けることはいい考えだと思うのか」と質問し、形勢が逆転した。ウォルズは答えに窮しながら、「リスクプールを十分に広くして全員をカバーするという考え方は、保険が機能する唯一の方法だろう」と述べた。

ウォルズはバンスが話している間、相手の話を聞くわけでもなく、もっぱら関連する統計や準備したセリフを確認しているように見えた。

この数カ月、ウォルズよりはるかに多くの記者会見で質問に答えてきたバンスは、全てを聞いていた。ウォルズが「専門家」に耳を傾ける必要性に言及すると、バンスは「専門家」がいかに間違えてきたかをまくしたてた。

「ドナルド・トランプはこの数十年で初めて、そうした超党派のコンセンサスに対し、もうそんなことはしないと断言する知恵と勇気があった」

トランプがその時々に本能に従い行ってきた政権運営について、興味深い表現ではある。もっとも、米中西部のラストベルトが今回の大統領選のカギを握ることを考えれば、ふさわしいレトリックだ。

ウォルズにとって最悪の場面は、追い詰められて支離滅裂になったときだ。1989年の天安門事件の際に自分は香港にいたと昔から何度も語っていることについて質問されたウォルズは(実際はネブラスカ州にいた)、はぐらかすように冗長な回答をした。その後「言い間違えた」と認め、「民主化を求める抗議活動が行われていたときに、香港と中国にいた」と続けた。

これは記者会見などで厳しい質問に答えることを避けてきたハリス陣営の弱点が浮き彫りになった瞬間でもあった。

バンスの痛恨の「失言」

しかし、討論会の終盤にはウォルズも、バンスにとって最悪の場面をつくり出した。

2020年の選挙をトランプが盗もうとしたことについて質問されたバンスは、大きな誤解だと冷静に否定した。すると、ウォルズは自分たちの意見が「一致する」問題もあるかもしれないと述べた上で、「この点は意見が懸け離れている」と続けた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン有力司令官は「元気」と軍幹部、レバノンで消息

ワールド

ウクライナ、ロシア産ガス輸送延長せず スロバキア首

ワールド

ヒズボラ、イスラエル第3の都市に初のミサイル攻撃 

ワールド

ヒズボラ指導者後継候補の死亡まだ確認できず=イスラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 2
    もう「あの頃」に戻れない? 英ウィリアム皇太子とヘンリー王子、「兄弟愛」の瞬間の映像に注目が
  • 3
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決闘」方法に「現実はこう」「想像と違う」の声
  • 4
    「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨…
  • 5
    愛する息子の食事に薬をかけて...... 中国女優、我…
  • 6
    キャサリン妃も着用したティアラをソフィー妃も...「…
  • 7
    「輪島復興」に立ち上がる若者たちの声を聞け――過疎…
  • 8
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 9
    習近平も演説で引用...トンデモ論文が次々生まれるほ…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 4
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 7
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 8
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 9
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 10
    米軍がウクライナに供与する滑空爆弾「JSOW」はロシ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中