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ジェンダー

世界トップレベルの女子の理数能力を無駄にする、日本社会のジェンダー偏見

2024年9月25日(水)14時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

理系専攻に限ると、進学率の性差は大きい。大学等のSTEM(科学、技術、工学、数学)専攻の入学者の女子比率をみると、日本では17%しかない(2021年)。高校生女子の理科・数学の学力が、世界トップレベルであるにもかかわらずだ。

女子生徒の理科学力と、STEM専攻学生の女子比率のマトリクスに日本を位置付けてけてみると愕然とする。<図2>を見て欲しい。

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日本は右下の位置にある。横軸の値は最も高いが、縦軸は最も低い。高校生女子の理科学力は最上位なのにもかかわらず、大学等のSTEM学生の女子比率は最下位。「もったいない」と言われるわけだ。この状況が改善されれば、日本の先進産業の生産性も伸びるだろう。

女子が理系分野に進まない要因として、「アンコンシャス・バイアス」の存在が言われるようになってきた。「理科や数学ができる女子は変わり者」というような、無意識の偏見(思い込み)だ。

こうした風当りは、年齢を上がるにつれて強くなる。理科の平均点を見ると、日本では小学校4年生だと女子が男子を上回るが、中学校2年生になると逆転する(IEA「TIMSS 2019」)。北欧の諸国では、中学生になると「男子<女子」の傾向が強まる。日本では、女子生徒の理系志向(嗜好)を摘む「ジェンダー的社会化」があるのではないか。それを促す言動をしていないか。親や教師は内省をめぐらすべきだ。

制度の上では、中高の理系教科の担当教員の女性割合を増やす必要がある。進路選択を控えた女性生徒にとって、いい役割モデルとなるだろう。大学のSTEM専攻で女子枠を作ったり、女子学生の学費を減免したりするのもいい。

「逆差別ではないか」という批判もあるかもしれないが、こういう強硬策を取ってでも、目に見える環境を変えていかないといけない。それほどまでに、日本の「ジェンダー・デバイド」の現状は酷いと言っていい。

<資料:OECD「PISA 2022」
    OECD「Education at a Glance 2024」

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