最新記事
北朝鮮

北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい

2024年9月12日(木)16時40分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
北朝鮮の10代少女たちに「緩慢な処刑」の判決

写真はイメージです Oleg Znamenskiy/Shutterstock

<韓国ドラマの視聴を「不純」だとして厳しく取り締まる北朝鮮だが、当局に隠れてこうしたコンテンツを楽しむ北朝鮮の国民は今も多く存在している>

韓国KBSは4日、韓国ドラマを見たという理由で10代の少女らが公開裁判にかけられる北朝鮮当局制作の映像を公開した。

■【映像】少女たちが後悔の涙を流す...北朝鮮、女子高生に残酷すぎる「緩慢な処刑」

北朝鮮当局はこうした映像を国民に見せ、「韓流に染まるな」と警告を続けている。

この映像は少し前に、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が今年7月、キャプチャ写真だけ公開したものと同一と見られる。KBSはボカシ処理をして放映したが、北朝鮮のオリジナル映像では素顔がさらされている。

北朝鮮当局はさらに、少女の名前と学校、年齢まで公開して「傀儡(韓国)テレビ劇(ドラマ)をはじめとする不純出版宣伝物を視聴・流布させた学生数人を法的に厳しく処罰した」と説明している。

(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

先述したRFAの報道によれば、映像に登場した女子高生のひとりは、無期の労働教化刑(無期懲役)を言い渡された。食糧事情と衛生環境が劣悪で、虐待と性暴力がはびこる北朝鮮の刑務所で、10代の少女が生き延びることは極めて難しい。「緩慢な処刑」と言い換えても過言ではないだろう。

少女らは皆、後悔の涙に暮れており、あまりにも残酷な場面と言える。

KBSによれば、「このような映像は合計10本ほど、2時間以上の分量で、ほとんどが2021年5月以降に製作された」もようだという。

KBSはまた、「新型コロナウイルス感染症の流行期、中国との交易中断以降に経済難が深まり、北朝鮮当局が住民の動揺を防ぐために統制を強化して人権状況はさらに悪化したと分析される」とも伝えている。

しかし、こうした強硬な取り締まりにもかかわらず、隠れて韓流を視聴する北朝鮮国民はいまだにいる。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

そもそも、金正恩総書記本人が、韓流や海外文化を楽しんでいるであろうことは、様々な状況証拠から明らかだ。不可能な韓流取締りを続けることは、非効率であると同時に無意味なのだ。そんなくだらないことで、国の貴重な担い手を地獄に送るのはナンセンスだ。

金正恩氏はさっさと「敗北」を認め、文化の「開放政策」に転じて若者らの歓心を買った方が、体制を守っていくうえでも得策なはずだ。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。

dailynklogo150.jpg


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中