革命防衛隊の「大失態」...ハマス指導者の暗殺という赤っ恥で、イランは本気で「中東大戦」に突き進む?
A COLOSSAL INTELLIGENCE FAILURE
また、イラン政府高官や訪問中の外国要人を警護する革命防衛隊アンサール・アル・マフディ保護部隊の将来も問題となっている。この部隊にも外国のスパイが潜入している疑いがあり、何度も首のすげ替えが行われている。19年には司令官のアリ・ナシリが忠誠心を疑われて解任された。後任にはファソラ・ジョメイリ准将が就いたが、その後もハニヤ暗殺などの失態が繰り返されている。
このような欠陥が露呈した今、革命防衛隊としては何とかして失地を回復し、面目を保ちたいところだ。しかしハニヤ暗殺という衝撃の事態を受け、ハメネイはますます治安・諜報部門の幹部刷新に力を入れることだろう。なにしろ今は、自分の後継者を決めなければならない大事な時期だ。
過去5年間、ハメネイはエネルギーの大半を、円滑で秩序ある世代交代の準備につぎ込んできた。最高指導者の死は政権を不安定にさせる可能性があるから、その前に革命防衛隊をしっかり鍛え直したい。それがハメネイの願いだ。
去る5月にイブラヒム・ライシ大統領(当時)が不慮の事故で死亡したことは、ハメネイにとって大きな痛手だった。2人しかいない後継候補の1人がライシだったからだ。しかもそこへ、国の治安・諜報機関が穴だらけであることを示す事態が起きた。こうなると、高齢のハメネイにとっては残る1人の後継候補(自分の息子のモジタバ師)の安全確保が最優先の課題となる。彼が殺されたら後継選びは振り出しに戻ることになり、イスラム共和国体制の存続も危ぶまれる事態となる。
メンツをつぶされたイランは黙っていないはずだ。国際社会には、どうせ型どおりの報復攻撃だろうとの見方が多いが、そうとは限らない。ハメネイや革命防衛隊には別の懸念がある。とりわけ革命防衛隊は、何としても外国からの潜入工作員を一掃し、イラン国内での破壊工作を放棄させるに足るダメージをイスラエルに与えたいと思っている。
ミサイルやドローンによる攻撃という在来型の報復にとどまらず、在外イスラエル人やユダヤ人に対する無差別テロの可能性も排除できない。在来型の報復攻撃でイスラエルの防空網を突破できないことはイラン側も承知している。しかし非武装の在外イスラエル人やユダヤ人に対するテロ攻撃を強化すれば、さすがにイスラエルもイラン国内での破壊工作を自重するのではないか。
そうは言っても、このところ革命防衛隊によるイスラエル要人暗殺計画は失敗続きだ。諜報部門を率いるカゼミとしては、ここで何としても点数を稼ぎたいところだろう。