最新記事
韓国

韓国、分断の光復節 ユン大統領に反発した独立運動家の遺族ら独自の式典開催

2024年8月15日(木)21時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

独立運動家の遺族らは政府とは別に記念式を開催

だが、今年の光復節の式典で一番例年と違ったのは、独立運動の活動家の遺族や子孫による団体「光復会」が、1965年の設立以来初めて、政府の光復節の慶祝式に参加せず、別途の記念式を行った点だろう。

問題は、忠清南道天安市にある独立記念館の新館長をめぐるトラブルが影響している。8月7日、政府国家報勲部が高神大学の金亨錫(キム·ヒョンソク)教授を独立記念館館長に指名し、休暇中のユン大統領がこれを承認して即決で任命された。

しかし、キム·ヒョンソク教授が過去、ある保守系団体で講演した際、「1945年8月15日は光復節ではない。1948年8月15日に政府を樹立した。そこから大韓民国が始まった」「1948年以前には韓国国民はなく、日本国民だけがいた」などニューライト的歴史観を表わしたことがあり、任命前から光復会は「日本による植民地時代の植民支配と親日反民族行為を美化し、大韓民国臨時政府の正統性を否定するニューライト(新右翼)を独立記念館館長に座らせようとしている」と反発。共に民主党など野党も「植民支配美化人事に対する任命を直ちに撤回せよ」と批判するなど政治問題化したのだ。

だが、ユン大統領は光復会や野党の任命撤回の声を無視したため、反発した光復会や野党側は政府が世宗文化会館で開催した光復節の式典をボイコット。光復会はソウル孝昌公園の白凡·金九記念館で独自の記念式典を開催し、野党の指導者や国会議員もこちらに出席した。イ·ジョンチャン光復会長は記念演説で「国民に理解と許しを求める」としながらも「歴史的退行を見守ることはできなかった」と述べた。

またイ会長はまた、キム·ヒョンソク独立記念館館長を念頭に「ニューライト陣営の主張どおり1948年に建国を認めることになれば、日本による植民地支配が合法化され、独立運動の歴史を根こそぎ否定されるだろう。厳重に警告しなければなりません。血で書かれた歴史を舌で論じる歴史で覆い隠すことはできません」と痛烈に批判した。

今年の光復節は、ユン大統領の演説内容とは裏腹に、南北統一以上に韓国国内の保守と革新陣営の対立解消が急務であることが明確になったといえるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中