最新記事
中東情勢

米軍、中東へ増派 イスラエルを守るためにイランと戦争か

2024年8月5日(月)17時57分
マンディ・タヘリ
中東に向かう空母エイブラハム・リンカーン

中東に向かう空母エイブラハム・リンカーン。その甲板でバスケットボールが行われている写真(2022年)  Orlando Ramirez-USA TODAY Sports

ヒズボラとハマスの幹部が相次いで殺され、イランはイスラエルに対して「厳しい報復」を誓った

米国防総省は8月2日、イスラエルを支援するため、中東に向けて戦闘機部隊や艦艇を追加派遣すると明らかにした。

【動画】ゲームにあらず、降り注ぐロケット弾を正確に捉えるイスラエルの迎撃ミサイル

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム系過激派組織ハマスの最高幹部と、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの大物司令官が相次いで殺害され、中東情勢は緊張の度を増している。

ハマスの政治局長であるイスマイル・ハニヤは7月31日、イランの首都テヘランで、滞在先の宿泊施設を狙った攻撃で死亡した。ハニヤはテヘランを訪れ、イランの新大統領の就任式に出席したばかりだった。

イランとハマスは、攻撃を行ったのはイスラエルだと非難しているが、イスラエルはこれまでのところ関与を認めていない。

ハニヤの死を受けて、イランの最高指導者アリ・ハメネイはイスラエルに対し、「厳しい罰が下るのを覚悟」せよと警告した。イラン革命防衛隊も3日、「適切な時と場所、そしてやり方で、厳しい」報復が行われるだろうとコメントを出した。

ハニヤの死の前日の30日には、レバノンの首都ベイルートへの攻撃で、ヒズボラの司令官フアド・シュクルが死亡した(イスラエルは攻撃を行ったことを認めている)。AP通信はレバノン保健省の話として、この攻撃で少なくとも5人の民間人が死亡したと伝えたほか、イランの司令官ミラド・ビディも巻き込まれて死亡したという。

「報復で殉教者の血をあがなう」

1日に行われたシュクルの葬儀では、ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララが、イスラエルとハマスの間の戦争は「新たな段階」に進むだろうと警告した。

ビディの葬儀の後の3日、革命防衛隊の幹部はイラン国営イスラム共和国通信に対し、「シオニストの敵に抵抗した殉教者たちの血をあがなうため、イランは報復を行うだろう」と述べた。

本誌はイスラエル政府に3日、電子メールでコメントを求めたが回答は得られなかった。

イランとレバノン、それぞれの国の首都で行われた「暗殺」により、中東の緊張は高まっている。3日、在レバノン米国大使館はレバノンに滞在する自国民に電子メールで注意喚起を行った。一部の航空会社は航空便の運航を停止したりキャンセルしているとして出国を促し、レバノンに残る場合は「非常事態を想定し、長期間にわたる自宅退避に備える」よう呼びかけた。

米国防総省の報道官は2日、国防総省が「イランおよびイランのパートナーやその代理勢力による中東地域の緊張激化の緩和に向けた」対応を取っていると述べるとともに、「イスラエル防衛への(アメリカの)強固な関与」をあらためて表明した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中