最新記事
米連邦裁

「バランスを失った」米連邦最高裁が下級審の判事たちにこき下ろされる

Dissenting Opinions

2024年8月2日(金)19時27分
キャサリン・ファン(国際政治担当)

newsweekjp_20240802022611.jpg

9人の判事からなる連邦最高裁はかつてなく批判にさらされている ALEX WONG/GETTY IMAGES

贅沢な接待旅行を報告せず

トーマス・ムーカウシャー元コネティカット州高等裁判所判事は、司法に対する信頼低下は「トップ(最高裁)から(下級裁判所へと)滴り落ちている」と語った。

「国民が司法を信用・信頼することは絶対的に重要だ」と、ポール・グリム元連邦地方裁判所判事は語る。「事実審判事であれ、控訴審判事であれ、最高裁判事であれ、自らの言動が厳しい倫理基準にさらされることを自覚する必要がある」


「歴史的に見ても、今は最高裁をめぐり大きな混乱が起きている」と、ニューヨーク大学のバリー・フリードマン法学教授は指摘する。

「その一因であるイデオロギー問題は、定期的に起こるものだ。しかし現在の最高裁判事の一部が、ごく基本的な倫理規定が自分たちには適用されないと考えて、その遵守をかたくなに拒否していることも大きな原因だ」

最高裁は23年11月に新たな倫理規定を設けたが、騒ぎは収まらなかった。

とりわけサミュエル・アリート判事とクラレンス・トーマス判事(どちらも保守)が、贅沢な接待旅行を報告していなかったことや、妻の問題行動(と批判派は考えている)を放置していることに、厳しい目が向けられている。

ニューヨーク・タイムズ紙は今年5月、アリートの妻が21年1月の大統領就任式の3日前に、自宅前に米国旗を上下逆さに掲揚していたことを報じた。

この掲揚方法は、20年大統領選で現大統領のジョー・バイデンがトランプに勝利したことを認めず、翌21年1月に連邦議会議事堂を襲撃して、選挙結果の承認手続きを阻止しようとした運動のシンボルとされる。

一方、ワシントン・ポスト紙は、トーマスの妻が20年大統領選後、マーク・メドウズ大統領首席補佐官(当時)に、開票結果に異議を唱えるよう促していたこと、そして激戦州の州議会議員に、選挙人(大統領選の結果承認手続きで、自州の選挙結果に応じて投票することを義務付けられている)を、トランプに投票する人物に差し替えるよう働きかけていたことを報じた。

だがアリートもトーマスも、妻の行動を理由に、連邦議会議事堂襲撃事件に関連する事案の審理を辞退することを拒否している。

アリートは今年6月、星条旗を逆さに掲げたのは自分ではなく、妻という「独立した一般市民」だと語った。また、トーマスは大富豪から贅沢な旅行をプレゼントされていたことについて、この種の「個人的なもてなし」を報告する義務はないと切り捨てた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中