「バランスを失った」米連邦最高裁が下級審の判事たちにこき下ろされる
Dissenting Opinions
贅沢な接待旅行を報告せず
トーマス・ムーカウシャー元コネティカット州高等裁判所判事は、司法に対する信頼低下は「トップ(最高裁)から(下級裁判所へと)滴り落ちている」と語った。
「国民が司法を信用・信頼することは絶対的に重要だ」と、ポール・グリム元連邦地方裁判所判事は語る。「事実審判事であれ、控訴審判事であれ、最高裁判事であれ、自らの言動が厳しい倫理基準にさらされることを自覚する必要がある」
「歴史的に見ても、今は最高裁をめぐり大きな混乱が起きている」と、ニューヨーク大学のバリー・フリードマン法学教授は指摘する。
「その一因であるイデオロギー問題は、定期的に起こるものだ。しかし現在の最高裁判事の一部が、ごく基本的な倫理規定が自分たちには適用されないと考えて、その遵守をかたくなに拒否していることも大きな原因だ」
最高裁は23年11月に新たな倫理規定を設けたが、騒ぎは収まらなかった。
とりわけサミュエル・アリート判事とクラレンス・トーマス判事(どちらも保守)が、贅沢な接待旅行を報告していなかったことや、妻の問題行動(と批判派は考えている)を放置していることに、厳しい目が向けられている。
ニューヨーク・タイムズ紙は今年5月、アリートの妻が21年1月の大統領就任式の3日前に、自宅前に米国旗を上下逆さに掲揚していたことを報じた。
この掲揚方法は、20年大統領選で現大統領のジョー・バイデンがトランプに勝利したことを認めず、翌21年1月に連邦議会議事堂を襲撃して、選挙結果の承認手続きを阻止しようとした運動のシンボルとされる。
一方、ワシントン・ポスト紙は、トーマスの妻が20年大統領選後、マーク・メドウズ大統領首席補佐官(当時)に、開票結果に異議を唱えるよう促していたこと、そして激戦州の州議会議員に、選挙人(大統領選の結果承認手続きで、自州の選挙結果に応じて投票することを義務付けられている)を、トランプに投票する人物に差し替えるよう働きかけていたことを報じた。
だがアリートもトーマスも、妻の行動を理由に、連邦議会議事堂襲撃事件に関連する事案の審理を辞退することを拒否している。
アリートは今年6月、星条旗を逆さに掲げたのは自分ではなく、妻という「独立した一般市民」だと語った。また、トーマスは大富豪から贅沢な旅行をプレゼントされていたことについて、この種の「個人的なもてなし」を報告する義務はないと切り捨てた。