最新記事
パリ五輪

【パリ五輪】4日目まで世界記録ゼロのパリ競泳、原因はプール?

Is Olympics Swimming Pool Too Shallow for World Records?

2024年8月1日(木)17時04分
ナタリー・ベネガ
パリ五輪、男子200メートル・バタフライ決勝

このプールの何が違う? 写真は男子200メートル・バタフライ決勝( 7月31日、ラ・デファンス・アリーナプール) REUTERS/Marko Djurica

<これが6つの世界新記録を生んだ前回の東京大会だったら、金メダルに手が届かなかったであろう選手もパリでは金を取っている。「問題は記録じゃない」と言う選手たちも、プールに違いがあることは認める。何が違うのか>

オリンピックのどの大会でも競泳は盛り上がる。種目が多くてメダルの数も多いし、世界記録が更新されることも多いからだ。だが2024パリ大会では、なかなかその記録が生まれない。

【画像集】「宙に浮いてる...」世界が熱狂!パリ五輪サーフィン「奇跡の一枚」

AP通信によれば、最初の4日間では世界新記録が一つも出なかった(その後7月31日、男子100メートル自由形の決勝で中国の潘展楽選手が世界記録を更新して金メダルを獲得した。今大会の第1号だ)。記録低迷の原因は、ラ・デファンス・アリーナプールが比較的浅く、波や水流の乱れが起きやすいことが理由ではないかと指摘する声もある。

競技用のプールは水深3メートルが最適と考えられており、ワールドアクアティクス(旧国際水泳連盟)は競泳および水球の競技用プールの水深は2.5メートル以上と定めている。だが、新たな規定ができる前に五輪開催を認められたパリ五輪のプールは水深が2.2メートルだという。

アメリカの競泳チームに協力しているデータ・スペシャリストのケン・オノは、ヤフーニュースに対して次のように述べた。「今回の会場のプールは私たちの地元にある水泳クラブのプールに比べれば速いタイムが出る設計になっているが、新記録を出すのに理想的な設計ではない。水深が浅いのが主な理由だ」

選手から苦情はなし

だがアメリカのスター選手であるケイティ・レデッキーはこうした懸念を一蹴。AP通信に対して、「私たちは全員、速く泳げる競泳選手だ。プールの水深に影響を受けることはない。特に問題視していない」と述べた。

女子400メートル個人メドレーで銀メダルを獲得したケイティ・グライムズ選手は、全ての選手が同じ条件で競技に臨んでいるとして、「記録が出にくいプールであるかどうかは関係ない。問題なのは、すべての選手が同じ条件かどうかだ」と述べた。

2024パリ大会の組織委員会は本誌の問い合わせにメールで回答し、プールの水深については2.2メートルが許容されていた当時に国際オリンピック委員会(IOC)から承認を得ていると改めて強調し、選手からの苦情も届いていないともつけ加えた。

「水泳競技が始まって2日目以降には3つのオリンピック記録も出ており、大会期間中にさらに多くの記録が更新されることを期待している」

本誌はこの件についてワールドアクアティクスにメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ギリシャ、クルーズ船観光客に課税計画 オーバーツー

ビジネス

中国人民銀、先週も国債を長期売り・短期買いか=上海

ワールド

中国、オランダのASML半導体製造装置輸出規制拡大

ワールド

アングル:マスク氏の利益に直結か、トランプ氏の「小
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元で7ゴール見られてお得」日本に大敗した中国ファンの本音は...
  • 3
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに
  • 4
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単…
  • 5
    ロシア国内の「黒海艦隊」基地を、ウクライナ「水上…
  • 6
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 7
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 8
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 9
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 10
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 1
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 5
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 6
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 7
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 8
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 9
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 10
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中